2025年4月24日(木)

Wedge REPORT

2025年4月14日

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに2025年4月13日から10月13日までの184日間にわたり開催される2025年の大阪・関西万博(Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)は、単なる一時的な国際イベントにとどまらず、地域経済の構造転換、外貨獲得、そして観光・産業の国際化を加速させる絶好の機会である。とりわけ、日本の経済社会が直面する少子高齢化、人口減少、地方経済の疲弊といった長期的課題を踏まえれば、この万博を起点とした「持続的な成長モデルの構築」は不可欠である。

大阪・関西万博をどう経済活性化につなげることができるのか(つのだよしお/アフロ)

 中でも、訪日外国人観光客(インバウンド)の受け入れと経済波及効果の最大化は、大阪万博成功の鍵を握る要素である。だが、インバウンドの本質は単なる“集客”ではない。“継続的な関係づくり”を通じて、訪問者とのつながりを帰国後も維持し、将来的な再訪・口コミ・関係ビジネスへと発展させる仕組みの構築が重要である。

 本稿では、過去の万博の成功・失敗事例を踏まえつつ、多様なステークホルダーによる活用視点、大阪の地域特性、そしてインバウンドの本質的価値を最大化する方策について論じる。

過去万博に学ぶ成功・失敗の教訓

 まず、過去の万博事例を分析し、成功に至った要素と課題を明確にする。

■ 成功事例:2010年 上海万博

 上海万博は、約7300万人という過去最多の来場者数を記録し、そのうち外国人観光客は800万人を超えた。多言語案内や公共交通の利便性向上、観光インフラの整備により、外国人にとって快適な滞在環境が整えられた。また、浦東新区など都市開発と連動したブランディング戦略により、万博後も上海の国際都市化が加速した。

 成功要因として挙げられるのは、①都市機能と観光機能の一体整備、②外国人向け案内・移動・決済の統合設計、③レガシーの明確化と都市開発の一体化である。

■ 失敗事例:1993年 テジョン万博

 韓国・テジョンで開催された万博は、外国人観光客の集客に大きく失敗した。アクセスの不便さ、宿泊施設や飲食店での言語対応の不十分さ、イベント後の跡地活用の不透明さなどが要因である。特に国際的PRと現地の受け入れ体制のミスマッチが顕著であり、「準備と実行の非連動性」が大きな課題となった。

 この教訓から得られるのは、アクセスや情報提供など物理的な障壁の低減とともに、「外国人目線での体験設計」の必要性である。


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