誰が何をすれば良いのか
大阪万博の成功には、官民学市民が連携し、それぞれの立場から自律的に価値を創出する必要がある。
■ 大手企業:社会的課題への対応者として
大手企業は資金・技術・人材面での貢献が可能であるが、単なるブランディングにとどまらず、地域や市民との共創的な関係を築くことが求められる。万博を「社会課題解決の実験場」と位置づけ、自社の技術やサービスを通じて未来社会をどう描くかが問われる。
たとえば、パナソニックやダイキン工業などの関西発のグローバル企業は、スマートシティ、再生可能エネルギー、空調管理などの分野で共創プロジェクトを推進している。イベントを通じて企業が果たすべきは、未来への責任を持った発信と、社会的インパクトの可視化である。
■ 中小企業:地域文化と市場感度の担い手
中小企業にとって万博は、「商機」であると同時に「発信機会」でもある。従来の観光土産や食品、工芸品にとどまらず、体験型コンテンツや地域資源を活かした高付加価値商品を展開することが重要である。言語・決済・品質管理の三位一体の対応が整えば、訪日客を対象としたビジネスの拡大が可能となる。
大阪商工会議所は「EXPOビジネス創出プロジェクト」を通じて、万博との接点を持ちたい中小企業への情報提供やマッチング機会を創出しており、既に多数の中小企業が出展やサービス開発に乗り出している。中小企業の強みは、その場の空気を読み、すばやく動く柔軟性と、地域密着の物語性にある。
■ 行政:全体設計と持続化の推進者
行政の役割は、イベントの物理的な実施だけでなく、経済効果の波及を広範囲に届ける制度設計にある。特に中小企業支援、交通・医療・防災などの公共インフラ整備、市民の理解醸成など、多面的な施策が求められる。
また、イベント後の跡地利用や知的資産の継承も行政の重要な責務である。1970年の大阪万博では、開催地の跡地が「万博記念公園」として整備されたものの、産業・研究機能の定着には時間がかかった。
今回は夢洲(ゆめしま)をIR(統合型リゾート)やスマートシティ開発と連携させる構想が進行中であり、そのビジョンをいかに実現可能な形に具体化するかが問われている。
■ 市民:共感と文化寛容性の創出者
市民の参加は、イベントの成功に不可欠である。生活への影響(混雑、物価上昇、治安など)への懸念に対応するためには、自治体や主催者による丁寧な説明と対話が求められる。また、ボランティア参加や市民向け体験プログラムを通じて、万博を「誰かのもの」ではなく「自分たちのもの」と感じられる場にすることが大切である。
さらに、訪日客の多様な文化的背景に対して、一定の寛容性と学びの姿勢を持つことも重要である。国際博覧会は単なる観光イベントではなく、異文化交流と相互理解の機会でもある。
