インバウンドの真価:関係構築と継続的価値創出
インバウンドを一時的な集客と捉えるのではなく、関係性の構築と継続的な価値創出と捉えることが必要である。訪日中の体験を単なる消費に終わらせず、帰国後にもつながる「関係インフラ」を構築することが重要だ。
■ 帰国後も関係性を維持するための方策
① デジタル接点の設計
中小企業や体験型施設、商店などでも、来訪者に対してLINE、WeChat、Instagramなどを通じた「帰国後フォロー」の導入を検討すべきである。例えば、SNSでの再フォロー、アフターサービス、関連商品の越境EC販売などが想定される。
② 会員化とCRM(顧客管理)
飲食店や観光施設が「訪日客向けメンバーシップ制度」を導入し、再訪時の特典、イベント情報、オンライン限定の体験提供などを発信すれば、ロイヤリティを醸成できる。
③ コンテンツの継続提供
訪日体験をもとにした日本文化コンテンツ(動画、講座、料理教室など)をオンラインで配信し、関係性を維持することも可能である。地域の博物館や美術館、観光協会が主体となって展開できる分野である。
大阪の特性と観光資源の強み
大阪には、もともと「賑わい」や「集客」による商機への感度が高い文化が根付いている。1970年大阪万博の際も、多くの地元企業や商店が自発的に外国人向け商品開発やプロモーションを行い、それが後のブランド確立につながった。
2025年の万博においても、大阪商工会議所、観光業界、飲食業界などが早期から連携し、ムスリム対応メニューの開発、多言語サービスの導入、デジタル決済の強化などが進んでいる。
こうした取り組みに加えて、関西圏との広域連携により、大阪を起点とした「周遊モデル」の展開も可能である。京都・奈良・和歌山、場合によっては福井等と連携し、訪日客の滞在日数延伸と一人あたり消費額の向上を図れる。
具体的には、関西空港から夢洲へのスムーズなアクセス構築(直通バス、水上交通など)、鉄道周遊パスの提供、多言語アプリによる観光支援といった施策が期待される。