ワシントン・ポスト紙は4月2日付で、トランプ大統領は、サウジアラビアのムハンマド皇太子との良好な関係を復活させているが、サウジは、域内で紛争が継続・拡大していることにより危機的な状況となっている、とする同紙ペルシャ湾岸支局長の解説を掲載している。

トランプ大統領が就任して以来、サウジアラビアは米・ロシア協議やウクライナの停戦と鉱物資源の取引の協議の場所を提供し、自国が同大統領の最も野心的な外交政策の中心にいることに気が付いた。
トランプ大統領がサウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド皇太子に重要な交渉の仲介を要請するのは同皇太子がロシアのプーチン大統領と良好な関係にあるためだが、さらにトランプ政権第1期に培われた大統領と同皇太子の友好関係を復活させるためだ。ちなみにトランプ大統領もムハンマド皇太子も、原理原則や同盟関係にこだわらず、何十億ドルもの貿易や投資を通じて他の国との関係を成立させるという「取引」を好む外交スタイルだ。
トランプ大統領は、第1期政権の時に乗り出し現在はガザの衝突で中断しているイスラエルとサウジアラビアの関係正常化について語るとき、それが中東に経済的繁栄をもたらすことを強調する。
サウジアラビアは、原油の確認埋蔵量で世界第2位だが、ムハンマド皇太子は、クリーン・エネルギーの垂直にそびえ立つ都市等のメガ・プロジェクトを推進し、また、スポーツのスポンサーとなり、さらに、著名人を招いた政治的、経済的な国際会議を主催している。その一方で、米国がプーチン・ロシア大統領を排斥しようとしているのにも関わらず同大統領との関係を維持し、その結果、米国とロシアの間でハイレベルの囚人の交換を仲介した。
さらに、宿敵イランとの関係を復活させている。サウジアラビア国内では、王制の支持者は、トランプ政権はムハンマド皇太子の近代化政策とその権力をより広めることを支持していると見なしている。
中東の伝統的な力の中心はエジプト、シリア、そしてイラクだったが、長年の混乱と経済力の低下からこれらの国々は弱体化し、サウジアラビアがその力の空白を埋めているとワシントン近東研究所のデニス・ロス氏(元米国務省政策企画部長)は述べている。しかしながら、サウジアラビアは依然として非常に専制的であり、多くの反体制派は、一掃され、刑務所に閉じ込められていて、さらに昨年1年間で345人が処刑されている。