ウォールストリート・ジャーナル紙は、「イスラエルは東地中海地域へのイランの浸透を阻止することは出来るが、ペルシャ湾地域の安全保障を担うことは出来ない。米国の関与が必要だ」とするゲレヒト民主主義防衛財団研究員の論説‘Israel Can’t Substitute for the U.S. in the Middle East’を掲載している。要旨は次の通り。

国防次官候補のコルビー氏は、イスラエルが適切に武装すれば米国は中東での関与を減らせると主張しているが、果たしてイスラエルとスンニ派の同盟でペルシャ湾地域におけるシーア派のイランの抑えることが出来るのだろうか。しかも、サウジアラビアは、まず米国がイランを打ち負かさない限りアブラハム合意(2020年のアラブ首長国連邦〈UAE〉、バーレーン、モロッコ、スーダンのイスラエルとの関係正常化)に参加しないだろう。さらに、米国の実質的な関与無しのイスラエルによるイランに対する武力攻撃は、結局、米国も巻き込まれる武力衝突の引き金となろう。
米国は繰り返し、中東への関与を減らそうとしているが、1950年以来増大したプレゼンスを減らすことが出来た試しはない。(対外的な関与を望まない)トランプ大統領であっても、この地域は現地の勢力に任せるには重要過ぎる。
なぜならば中東は、依然として石油資源の供給源であり、米国が石油を増産しても代替出来ない。そして、イスラエルはその軍事力を以てしてもペルシャ湾地域を守ったり、イランを打ち負かしたりすることは不可能である。
他方、米国の支援があれば、イスラエルは、東地中海沿岸のイランの代理勢力を阻止したり、イランがイラクを経由してヨルダンに進出することを止めたりすることは可能である。また、仮にトルコがより拡張主義的となり、イスラム原理主義に傾倒したトルコがシリアを超えて影響力を延ばそうとしてもイスラエルは阻止出来るだろう。
もし、イランが野放しとなり、特に核武装すれば、ペルシャ湾地域からの石油輸出を妨害したり、サウジの脆弱な石油施設をミサイル攻撃したりするだろう。まさに19年にイランは、サウジの石油施設を攻撃し、短期間だがサウジの石油生産の50%を止めた。