2025年3月23日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月21日

 ワシントン・ポスト紙が、米情報機関はイスラエルがイランの核施設を数カ月以内に攻撃しようとしており、その結果、イランの核開発は数週間から数カ月遅れる一方で中東の緊張がより高まるだろうとみているとの解説記事を掲載している。要旨は次の通り。

イランのペゼシュキアン大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相(ロイター/アフロ・AP/アフロ)

 米統合参謀本部情報部と国防情報局(DIA)は、イスラエルがイランのフォルドウとナタンズの核施設を2025年の初めの半年以内に攻撃するだろうと警告し、その結果、イランの核開発は数週間から数カ月遅れるだろうが、中東の緊張がより高まるだろうというレポートを米国の政権交代のタイミングに提出した。

 イスラエルの攻撃の可能性が高まっていることは、中東と欧州の武力衝突を緩和し平和を回復すると選挙で公約する一方でイスラエルを強く支持しているトランプ大統領にとり、最初の試練となろう。このレポートは、二つの攻撃計画を示しているが、いずれも空中給油、インテリジェンスの提供等での米国の関与を想定している。

 イスラエルがスタンドオフ攻撃(遠距離攻撃)する場合はイランの領空外からのALBM(空中発射型弾道ミサイル)攻撃だろうとし、より危険度の高い近距離攻撃の場合はイスラエル空軍機がイラン領空を侵犯して核施設の近くからBLU-109s(バンカーバスター)を投下することになるが、最近、トランプ政権はバンカーバスターの精密誘導キットのイスラエルへの売却を承認した。

 米側は、イスラエルの核施設への攻撃は数カ月間、場合によっては数週間、イランの核開発を遅らせるに過ぎないと分析している一方、如何なる攻撃も、イラン側が、米国とイスラエルにとってレッド・ラインである兵器級の高濃度濃縮ウランを製造するきっかけとなるだろうとみている。なお、ウォールストリート・ジャーナル紙も2月12日に「今年、イスラエルはイランを攻撃することを検討している」と報じている。複数のイスラエル政府関係者は、米側の分析に同意せず、攻撃により実質的に核開発計画を遅れさせることが出来ると主張している。


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