パレスチナ自治区ガザのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は早ければラマダン(断食月)明けの4月にも再開するとの見方が強まってきた。イスラエルが停戦合意の第2段階に移ることを拒否、ハマス側との対立が激化しているためだ。イスラエルの合意破りの背景には「恒久停戦なしの人質解放」というネタニヤフ首相のしたたかな思惑が働いている。

もともと恒久停戦の意思なし
6週間にわたった停戦合意の第1段階は3月1日に期限を迎えた。この間、ハマスは人質25人を解放し、8遺体を返還した。イスラエルはパレスチナ人囚人1700人以上を釈放した。だが、恒久停戦やイスラエル軍の完全撤退を話し合う第2段階は協議にすら入ることができなかった。
第1段階の間に協議が開始されるという合意となっていたが、イスラエルはハマスを完全に解体するまで恒久停戦の協議に応じるつもりはなかったとみられる。ネタニヤフ政権の極右閣僚は1月の停戦合意の際、第1段階が終わったら戦闘を再開するよう公然と主張、ネタニヤフ首相も同様の考えだったようだ。
首相は合意の履行が難航する中、米国のウィトコフ中東担当特使による「第1段階の停戦延長」提案に飛び付き、この新提案を受け入れるようハマス側に迫った。新提案は、イスラムのラマダン終了(3月29日)、その後のユダヤ教の「過ぎ越し祭」期間が終わる4月20日ごろまでの停戦延長を求めている。
この間に、ハマスが残された人質の半数を解放、遺体もその半数を引き渡すよう要求している。イスラエルによると、未解放の人質は59人。うち生存者は24人とされ、残りはすでに死亡しているとみられている。生存者のうち、1人は米国市民だという。首相の狙いは「恒久停戦交渉には応じないまま時間稼ぎをし、人質をできるだけ多く解放する」(アナリスト)ことに他ならない。
しかしハマスは新提案を停戦合意破りと非難。「物事を振り出しに戻そうという陰謀」と拒否し、第2段階への即時移行を要求している。
イスラエルはハマスに圧力を掛けるため、食料や水などガザへの支援物資の搬入をストップ。ガザへの送電も止めた。対立が激化する中、イスラエル軍の攻撃で死傷者も出ており、ガザでは「ラマダン明けにも戦闘が再開する」との恐れが広まっている。