2025年3月23日(日)

教養としての中東情勢

2025年2月7日

 パレスチナ自治区ガザから住民を追い出し、米国が長期所有して「中東のリビエラ」にする、という米国のトランプ大統領の提案に国際社会が猛反発、米政府は釈明に追われている。唐突感あふれる非現実的なアイデアがなぜ表明されたのか、その背景を探った。

米国のトランプ大統領(右)がイスラエルのネタニヤフ首相との会談後の会見でガザの「米国所有」アイデアを発表した(AP/アフロ)

政権内部で検討された形跡なし 

 ガザのパレスチナ人住民は約220万人。一昨年10月からのイスラエル軍の攻撃で4万7000人が犠牲になった。ガザ戦争が終結した後、残った住民をエジプトやヨルダンに強制移住させるという発想は元々、戦争直後、イスラエル情報機関が策定し、その文書の存在を一部メディアが報道していた。

 トランプ氏がこの住民移住を言い出したのは大統領就任後、建物のほとんどが破壊され、がれきと化したガザの惨状を映像などで見てからだ。同氏は「解体現場」と評したが、誰がここまで悲惨な状態にしたのかについては全く触れていない。同氏は先月末、ヨルダンのアブドラ国王とエジプトのシシ大統領に電話、ガザの住民を引き取ってくれるよう要請、拒絶された。

 しかし、米国が保有するという考えは両首脳には伝えられてはおらず、政権内部で真剣に検討された形跡もない。トランプ大統領は4日のイスラエルのネタニヤフ首相との会談後の共同記者会見で唐突に発表したわけだ。首相も「歴史を変えるものだ」と賛同したものの、戸惑いがにじみ出ており、事前に知らされていたかは不明だ。

 会談前、大統領の側近は「ガザの再建には15年以上必要になり、住民が一時的に居住する場所を見つけることが重要だ」と述べていたが、米国が所有するとの案は知らされていなかったようだ。大統領の方針は1期目から「中東の厄介事には関与しない」というのが基本。「米国の所有」はそうした政策からの大転換。カネも400億ドル以上かかり、大統領は「必要なら軍も派遣する」とまで踏み込んだ。


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