高市早苗政権が10月に発足してから2カ月あまり。最近では「存立危機事態」発言による対中関係の悪化が取り上げられがちだが、「責任ある積極財政」と「強い経済」を掲げる経済政策や、「世界の真ん中で咲き誇る」外交と、様々な政策が打たれている。
2026年も国内外での課題は目白押しだ。これまでの記事から、高市政権の政策を検証してみたい。
<目次>
・「責任ある積極財政」で「強い経済」が実現しない理由、高市内閣の“盲点”、経済成長に必要なこと(2025年12月24日)
・〈高市新首相の課題〉融通無碍な自民党を刷新し、中間層の縮小と低所得層の増大に向き合え(2025年10月23日)
・高市・トランプ会談をアメリカはどう報じたか?国を挙げた日本の“もてなし”の評価とは(2025年11月4日)
・日経平均5万円で「高市トレード」と浮かれるな!日本経済の3つの課題、細心の注意を払うべきこと(2025年11月18日)
・「世界の真ん中で咲き誇る」という高市外交の真意、「存立危機事態」発言はなぜなされたか…(2025年11月25日)
「責任ある積極財政」で「強い経済」が実現しない理由、高市内閣の“盲点”、経済成長に必要なこと
「強い経済」「責任ある積極財政」を経済・財政運営の指針として掲げる高市早苗首相は、2025年11月21日に総合経済対策を閣議決定した。その資金的裏付けとなる25年度補正予算は、新型コロナ禍後では最大規模となっている。26年度予算は122兆円台とやはり過去最高額となるようだ。
補正予算の一般会計の歳出総額は18兆3034億円で、生活の安全保障・物価高への対応に8兆9041億円、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現に6兆4330億円、防衛力と外交力の強化に1兆6560億円、災害やクマ被害の拡大に備えるための予備費7098億円がそれぞれ計上された。
補正予算の財源には、25年度の税収の上振れ分2兆8790億円、24年度の決算剰余金2兆7129億円などが充てられるが、それでも足りない11兆6960億円は新規国債発行で充てられる。なお、新規国債発行による財源調達は補正予算の歳出総額の63.9%となっている……
続きを読む⇒「責任ある積極財政」で「強い経済」が実現しない理由、高市内閣の“盲点”、経済成長に必要なこと
〈高市新首相の課題〉融通無碍な自民党を刷新し、中間層の縮小と低所得層の増大に向き合え
自民党の新総裁に高市早苗氏が就いた。高市氏には、まず自民党の支持基盤の再構築という、かつてない難題が待ち受けている。
「かつてない難題」と表現したのは、自民党の支持基盤の弱体化は一時的な現象ではなく、社会構造の激変と関係していると考えられるからだ。
日本社会が今、直面している構造変化は、言うまでもなく少子高齢化、そして人口減少だが、「中間層の崩壊と低所得化」という深刻な側面を持っている。今年11月には、結党70年を迎える自民党が、幅広い支持基盤を再構築し、国民政党として政権を担い、再び安定的に運営できるようになるかどうかは、日本社会の激変に対応できるか否かにかかっているだろう……
続きを読む⇒〈高市新首相の課題〉融通無碍な自民党を刷新し、中間層の縮小と低所得層の増大に向き合え
高市・トランプ会談をアメリカはどう報じたか?国を挙げた日本の“もてなし”の評価とは
トランプ大統領が10月27日に来日した。アジア歴訪の一環として、マレーシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席した後、直接東京に向かい夕方到着した。
日本の複数の地上波テレビは、カメラを羽田空港に切り替え、大統領専用機エアフォースワンが着陸する様子や、それを一目見ようと空港デッキに集まった人々を映し出した。そして、トランプがタラップを降り、出迎えの人々と挨拶する様子や、専用ヘリであるマリーンワンで都心のヘリポートへと向かう様子を、取材ヘリを飛ばして追い続けた。
その後も、天皇に拝謁するため皇居へ向かう特殊車両ビーストに乗る大統領を空と陸から中継した。その間に予定されていた番組のコーナーは差し替えての中継であり、日本側の関心の高さをうかがわせた……
続きを読む⇒高市・トランプ会談をアメリカはどう報じたか?国を挙げた日本の“もてなし”の評価とは
日経平均5万円で「高市トレード」と浮かれるな!日本経済の3つの課題、細心の注意を払うべきこと
日経平均は2025年になってようやく、1989年の最高値を超え、さらに続伸して5万円を超えている。では、東京市場には本当の意味で活気が戻っているのかというと、実際は課題だらけというのが現状である。
「高市トレード」などと浮かれている場合ではないのであって、今こそ、日本経済の方向性を見据えた冷静で戦略的な思考が求められる。
問題の1つ目は、株高のどこまでが「真水」なのかという問題だ。現在の東証では、その大型株の多くは日本発の多国籍企業で構成されている。こうした多国籍企業は、ニューヨーク市場にも上場されており、むしろ株価の主要なトレンドは国外で形成されるし、株価を左右する株主も多くが外国勢力である……
続きを読む⇒日経平均5万円で「高市トレード」と浮かれるな!日本経済の3つの課題、細心の注意を払うべきこと
「世界の真ん中で咲き誇る」という高市外交の真意、「存立危機事態」発言はなぜなされたか…
台湾危機が「存立危機事態」に当たるという高市早苗首相の発言が紛糾している。台湾問題を高市外交の目玉の一つとしたいという気持ちが込められていたのかもしれないが、タイミングが悪すぎた。高市首相と支持者にとっての意図と国際社会や中国当局者の取り方に大きなずれがあるのではないか。
米軍が台湾法に準じて米軍派遣した際の日米安保条約枠組みでの自衛隊の後方支援のことを想定していたのだろう。だからこそもう一歩踏み込んだ安保法制の整備が論点となっている。法的認定、事実認定、日米安保体制の具体的日米協力のいずれについても国内的議論は統一されてはいない。米国に対しての発言でしかなかったとみられる。しかし今の時点で、米国が中国と事を構えることを望んでいるとは思えない。やはり日本は対外的には慎重であるべきと思う。
高市政権の外交は、発足直後の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議での中・韓首脳会議、トランプ大統領来日という華々しいスタートを切っていた。各国が注目している中だった。
