2025年12月8日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年11月18日

 日経平均は2025年になってようやく、1989年の最高値を超え、さらに続伸して5万円を超えている。では、東京市場には本当の意味で活気が戻っているのかというと、実際は課題だらけというのが現状である。

日経平均の「5万円超え」の現状を冷静にみなければならない(つのだよしお/アフロ)

 「高市トレード」などと浮かれている場合ではないのであって、今こそ、日本経済の方向性を見据えた冷静で戦略的な思考が求められる。

日経平均をドル建てで見ると

 問題の1つ目は、株高のどこまでが「真水」なのかという問題だ。現在の東証では、その大型株の多くは日本発の多国籍企業で構成されている。こうした多国籍企業は、ニューヨーク市場にも上場されており、むしろ株価の主要なトレンドは国外で形成されるし、株価を左右する株主も多くが外国勢力である。

 いい例がトヨタ自動車であり、ニューヨーク証券取引所(NYSE)ではティッカー・シンボル(取引略称)として、栄誉ある2文字コードの「TM」で取引されている。市場における取引量が多い証拠である。こうした多国籍企業の場合は、生産地も消費地も世界に分散されており、どちらかといえばドルベースでの連結決算を目指した経営がされている。

 ということは、日本企業であってもドルで株価が形成される。したがって、円高になれば円ベースの株価は下落するが、円安になれば数字が膨張して株高に見える。今回の「高市トレード」について見てみるのならば、高市早苗氏が自民党総裁に選出された10月4日を基準に考えてみると、次のような現象が浮かび上がる。

 10月4日現在のドル円レートは、147.43円で、日経平均は前日金曜日の10月3日終値で4万5769.5円であった。ということは、この時点での日経平均をドル建てで考えると310.45ドルということになる。

 その後、連立の組み換えなどを経て、高市氏が組閣をして現在に至るわけだが、この週末の11月14日の日経平均の終値は 5万376.53円となっている。確かに5000円近い上げということになるが、では現在のドル円レートを見るのであれば、同じ11月14日で見てみると154.6円となっている。従って最新の日経平均をドル建てで考えると、325.85ドルである。つまり、ドル建てでは5%動いたに過ぎない。


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