2025年12月5日(金)

ビジネスと法律と経済成長と

2025年11月10日

 人工知能(AI)開発で急伸し、東証グロース市場に上場していたオルツの元社長や最高財務責任者ら幹部4人と法人としての同社が金融商品取引法違反の罪で起訴された。粉飾決算の疑いが指摘され、証券等監視委員会による調査が行われていた。並行して東京地検特捜部による捜査も行われていた。 

オルツが主力商品として売り出していた「AI GIJIROKU(AI議事録)」(同社ホームページより)

 オルツは、2014年11月に設立された。AIとその関連技術の研究・開発等を目的とし、業績を飛躍的に向上させて24年10月に上場を果たした。

 元社長は、複数のベンチャー企業を立ち上げた実績をもち、テレビ番組に取り上げられるなどの「著名人」であった。元最高財務責任者は、外資系の大手証券会社に勤務していた経験もあった。華やかな経営陣に支えられ、成長分野とされるAI関連事業を営むオルツは、一時期「ユニコーン」ともてはやされていた。

 上場をしてから1年しか経っていない時期であり、本件が我が国の株式市場に対する社会の信頼を大きく損なうものであることは、疑いない。また、日本の株式市場の存在意義を問うているともいえる。

監査の責任追及では不十分

 検察によれば、オルツが上場を果たす要因となった業績の向上は、粉飾決算によるものであった。内容は「循環取引」による「架空売上」の計上であり、報道によれば、計上された「架空売上」は110億円に上るとのことである。

 ごくごく簡単にいえば、「循環取引」による「架空売上」の計上は、オルツが自らの資金を使って(取引先を通じて)自らの商品を購入する、という方法で行われた。事実であれば、オルツが上場を果たしたストーリーは、経営陣による壮大な〝作り話〟であったことになる。

 本件をめぐって、オルツの会計監査を行う会計監査人や経営陣(取締役)の業務執行を監査する監査役の責任を指摘する声が上がるのも、当然である。ただ、これだけで十分であろうか。


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