流出した資金
オルツは、7月30日に東京地裁に対して民事再生手続開始の申立てを行っている。報道によれば、負債総額は約24億円とのことである。すなわち、「循環取引」を行っていたはずのオルツは、その「循環」させる資金にも窮したことになる。
AIをめぐる研究・開発には多額の資金が必要となる。オルツにおいても、多額の資金が「研究開発費」の名目で費消されていたと考えられる。〝作り話〟を餌に(事情を知らない)投資家から募った資金も、負債となった金融機関からの借入金も、大部分は「研究開発費」に充てられたはずである。加えて、オルツでは、「循環取引」が行われていた。
オルツが取引先に支払った資金は、当該取引先の取り分を除いて「循環」し、オルツに戻っていた。そして、その資金も「研究開発費」に充てられたと思われる。
他方で、研究・開発によってどのような成果が得られたのかは、必ずしも明らかではない。オルツは「AI GIJIROKU(AI議事録)」という商品を販売していた。しかし、それ以外の商品はあまり知られていない。十分な成果が得られないまま漫然と研究・開発が続けられていたとすれば、研究・開発に名を借りた資金の移転ではないかとの疑いが生じる。
オルツの資金は、「循環取引」によって還流したものを含めて、その大部分が研究・開発を受託した企業(以下「受託企業」)に提供され、そして消えた。
受託企業は、果たして受託にかかるAIやその関連技術を研究・開発するだけの実力(設備および人員と能力)を有していたのか。そして、実際に研究・開発は行われていたのか。研究・開発が行われていなかったとすれば、オルツから提供を受けた資金はどこに消えてしまったのか。
民事再生手続の中で、研究・開発の実態とともに、流出した資金の行方が明らかとなることを期待したい。
