ガザ地区の暫定的な統治を監督する「平和評議会」の発足にあわせた署名式典が22日、スイス・ダボスで行われた。トランプ米大統領がトップを務め、式典ではガザの非軍事化と美しい再建を確実にするとして「新ガザ」構想が打ち出された。だが、ガザ停戦と復興を監督する目的で設立されたはずの評議会が、各地の紛争解決を目指す国連に対抗する組織を目指しているのではと懸念の声も上がっている。トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏がプレゼンしたガザ再建「マスタープラン」の煌びやかなスライドとは裏腹に、待ち受けるのは一向に折り合いを見せることのない、ハマスの武装解除、イスラエルの完全撤退などを巡る難題だ。
大々的に設立された評議会にどの国が参加するかなどへ世界の注目が集まるなか、肝心のハマスの動きはあまり見えてこない。
この停戦交渉に向けて、重要な当事者であるハマスは一体、どう臨むのか。
「ハマスがクリスマスに発表した『我々の物語』(『ハマスがクリスマスに発表した「我々の物語」アルアクサの洪水を正当化 殉教と犠牲を美化したプロパガンダ』)」では、ハマスが昨年末に突如発表した文書において殉教と犠牲を美化したプロパガンダ、そして10月7日の越境攻撃を栄えある「成果」と声高に称えるナラティブ(物語)を読み解いた。
実は、そのハマス文書にはもう一つ大事な項目が描かれていた。
「戦争を止めるためのハマスの努力とトランプ案」という章だ。
トランプ氏主導の和平交渉 抜け落ちていた「ハマス武装解除」
これはまさに、トランプ米大統領主導の和平計画について、ハマスの捉え方や思惑を知ることのできる興味深い内容だ。
去年10月に停戦合意「第1段階」を踏まえてか、ハマスは交渉の厳しさにも関わらず停戦を「勝ち取った」として、ハマスの功績と犠牲を払った市民の不屈の精神を讃えている。
「交渉は極めて困難で複雑かつ多面的であった。ハマスは強大な圧力とシオニスト側の駆け引きに直面したが、人民が支払った甚大な犠牲と殉教者の血に対する責任から、最大限の知恵、認識、決意をもって交渉に臨んだ。敵はガザからパレスチナ人を消し去り、抵抗を完全に粉砕しようとしたが、最終的に停戦を勝ち取ったのは、人民の不屈と犠牲の成果であった」
「2年にわたる伝説的な忍耐の末、抵抗勢力は2025年10月初頭、戦争を終結させる停戦合意に到達した。占領側はガザを空にし、人民の意志を打ち砕き、降伏を強いることを目的としていたが、人民の不屈と抵抗の力によってその目的は失敗に終わった」
これは、事実上ハマスの勝利宣言のような格好となっている。
だが、この停戦交渉で最終合意した内容としてハマスが列記している項目を良く見ると、まさに今焦点となっている重要事項が欠けていることに気付く。
- 戦争、侵略、ジェノサイド、飢餓の終結
- 占領軍の段階的撤退および完全撤退
- 強制移住の阻止、新たなナクバの阻止
- 約4000人のパレスチナ人囚人の釈放
- 包囲の解除、人道支援の搬入、全面的復興の開始
ここには、イスラエル、そして米国側が強く求めている「ハマスの武装解除」が完全に抜け落ちているのだ。ハマスの武装解除は、和平計画で最も難航が予想される難題の一つだ。だが、この文書ではイスラエル軍の完全撤退やパレスチナ人囚人の釈放など、ハマス側が強く求める内容は全て列挙されているにも関わらず、自らの武装解除については一切触れられていない。
ハマスは、イスラエルによる占領が続く限り、一貫して武装解除を拒否する姿勢を示している。一方で、昨年12月29日に米南部フロリダ州でイスラエルのネタニヤフ首相と会談したトランプ氏は「(早期に)武装解除しなければ、ハマスは大きな代償を払うことになる」と警告するなど、交渉は全く噛み合っていない。
米ニュースサイト・アクシオスは、昨年12月下旬までにトランプ氏が「第2段階の開始」を宣言するなどと伝えていたものの、実際には1月中旬にずれ込んだ。しかも、イスラエル側が求める残り一体の遺体返還が完了しないまま、米国が第2段階の開始を宣言したことには、ダボス会議も控えて外交成果を打ち出したかったトランプ政権側の焦りも垣間見える。
