初版から大幅に更新されたハマス文書
そもそも、この壮大な「ハマスの物語」が発表された2025年12月24日は、先のトランプ氏とネタニヤフ氏による会談のわずか5日前というタイミングだった。国際社会からのイスラエルに対する批判もいよいよ高まるなか、下落していたガザ内部からのハマス支持が若干回復したとの世論調査結果が去年秋に出ていたこともあり、ハマスはある種の自信を付け、イスラエルを牽制する意図があったことも窺える。
その証拠に、このハマス文書では、2024年1月に発表された初版で綴られていた、越境攻撃への言い訳と若干の過ちを認めるニュアンスがほぼ消えていた。実は今回の文書は、16ページだった2024年版を大幅に更新したもので、倍以上の42ページに及ぶ。初版は「越境攻撃の正当化」を中心とする防御的な文書であったのに対し、今回は、その後2年間で起きたイスラエルによる残虐な攻撃、そして各国のパレスチナ国家承認の流れなどを捉え、越境攻撃を「歴史的転換点」と位置付けて、寧ろ成果を強調する傾向が圧倒的に強まっている。
タイミング的にも、初版発表時はイスラエル側の民間人多数が犠牲になってから数カ月しか経っておらず、国際社会でも未だハマスへの非難の向きも強かった。そのため、「民間人が標的にされた事例があったとすれば、それは偶発的に占領軍との交戦の過程で起きたもの」などと、自らの攻撃への口実をなんとか得ようとすることにページを割いている。微かにではあるが過ちを認めるかのように、混乱の中で「間違いが生じたかもしれない」とも述べていたのだ。
だが、その後の国連や人権団体からの綿密な調査により、ハマスの残虐な行為が厳しく糾弾され、「ハマス部隊がイスラエルの民間人に危害を加えようとしなかったというハマスの主張は虚偽」「民間人の意図的殺害および人質化が、計画され高度に組織化されたものであったことが示唆される」などと、初版でハマスが展開した主張は悉く否定された。つまり、民間人を標的にしていなかった、もし民間人の被害があったならば混乱に乗じて一般のパレスチナ人などが襲撃に参加した結果、などと一般市民に責任を転嫁するようなハマス側の主張が様々な証拠により退けられた形だ。
