「焼き鳥屋なのに、肝心の焼き鳥が売り切れとはどういうわけだ?」
1人の男が店の大将に食ってかかった。大将も負けてはいない。
「焼き鳥の串を打つのは重労働なんだ。あんたも機械屋なら、串を打つ機械でもつくってみろよ」
男は店にツケがあった。大将はもしも串を打つ機械を作れたら、ツケはチャラにしてやると豪語した。
「待てよ、全国には無数の焼き鳥屋がある。マーケットは大きいはずだ。これはひょっとすると……」
男の名前は小嶋實さん。焼き鳥などの串刺機の専門メーカー、コジマ技研工業の創業者である。
現在のコジマ技研は、国内のみならず世界シェアの9割を独占し、経済産業省から「グローバルニッチトップ企業」に認定された社員わずか12人の〝小さな巨人〟だが、当時の實さんは、連帯保証人の判をついたのが仇になって膨大な借金を抱えていた。2代目で現社長の小嶋道弘さん(62歳)が言う。
「先代は串刺機を完成させて売り出しましたが、先行する会社が20社以上もあり、しかも大半が粗悪品だったので串刺機は使い物にならないという評判が定着していて、ほとんど相手にされなかったそうです」
そんな實さんの苦労をつぶさに見ていた道弘さんは、絶対後継者にはなるまいと心に誓った。しかし、跡を継ぐはずの弟が急逝してしまい、2代目にならざるを得なくなった。
ご本人には申し訳ないけれど、道弘さんのボヤきが面白い。
「先代のモットーは『お客様の期待を裏切らない』ことでした。だから、ものすごく頑丈な機械を作ったんです。モーターなんかすごくいいものを使ってるから、何十年も壊れません。もう、小型車にクラウンのエンジンを積んでるようなもんですよ」
まさに良心的なものづくりでは?
「ところが、頑丈過ぎて買い替え需要が少ないんですよ。うちはね、買い増し需要ばっかりなんです」
實さんが串刺機の初号機を完成させたのが1977年。その初号機をヤフオクで見つけた社員が落札してみると、なんと〝完動品〟だったという逸話が残っている。
なぜ、コジマ技研の串刺機は壊れないのか。社歴36年のベテランつくりびとに、その秘密を聞いた。
