こうしたメカ的発想の極致を、串刺機の命・串ガイドに見ることができる。打ち出した串をこのガイドでしっかり支えることで水平な刺しが実現するのだが、ガイドの受け口は齋藤さん自ら手作業で削っている。
「丸い棒状の串ではなく、持ち手が平たいピストル型の串がありますよね。その平たい持ち手が、平たい食材と並行になるよう刺すにはどうするか。ガイドの受け口の形状によって、串を回転させるのです」
見た目は単なる溝に過ぎないが、45度の角度で打ち出されたピストル型の串が、受け口を通過するだけで見事90度に寝てしまうのだ。
「ついでに言えば、うちの機械は摺動部にターカイト(樹脂)ではなくボールベアリングを使っているので、なかなか摩耗しないんですよ」
構造がシンプルで、電子部品に頼ることなく、しかも肝心な場所には耐久性の高い部品を使っているから、コジマ技研の串刺機は壊れない。
「先代はメンテで食おうと思っていなかったので、壊れにくいことをモットーにしていました。先日、修理依頼の電話を受けたら、なんと29年前に販売した製品でした。買い替え需要が少ないわけですよ」
ただし、グローバル展開では強みになると齋藤さんは言う。
「壊れないから、海外まで修理に出かける必要がほとんどないんです」
顧客満足度と商売
難しいバランスをどう取るか
齋藤さんの話を聞いていて、斎藤幸平『人新生の「資本論」』(集英社新書)の一節が頭に浮かんだ。
「だから究極的には、売れればなんだってかまわない。つまり、『使用価値』(有用性)や商品の質、環境負荷はどうでもいい。また、一度売れてしまえば、その商品がすぐに捨てられてもいい」
コジマ技研の串刺機は腱鞘炎を起こすほど過酷な串打ち作業の負荷を軽減し、しかも壊れにくいから廃棄による環境負荷も少ない。本物のエコ製品に違いないが、抜群の「有用性」ゆえに買い替えのスパンが長くなるというジレンマを抱えている。
超ニッチな市場だからこそ商売が成り立っているが、もしも「売れればなんだってかまわない」コンペティターが現れたら、いまの地位は危うい。
再び、道弘さんがボヤく。
「大手の家電メーカーさんに、ぴったり10年で壊れるものづくりの方法を教わりたいもんですよ」
市場価値=売れることと、使用価値=有用性。つくりびとの心を満たすのは、果たしてどちらなのか。
