名鉄常滑線の名和駅を降りると、かすかにゴムが焦げるような臭いがした。
常滑線の沿線には東レ、三菱重工、日本製鉄など大企業の工場が点在し、その隙間を埋めるようにいくつもの中小企業が軒を連ねている。
その中小企業群の中でひときわ異彩を放っているのが、従業員わずか26人の加藤精密工業である。
二代目代表取締役の加藤義春さん(65歳)によれば、先代は大工が使う自動カンナを作っていたという。
「それほど能力の高くない機械だったし、時代とともに機械も変わっていくもんで、あまり売れなくなってしまったんです」
会社と同時に借金も引き継いでしまった加藤さんは、このままでは未来はないと木工から鉄鋼に事業を転換。大企業から仕事をもらうため、がむしゃらな営業を繰り広げた。
「うちの合言葉は、やります、やれます、やって見せます。これを作れるかと聞かれたら、たとえ作り方がわからなくても、はい、できます!って答えるんです」
