2025年12月5日(金)

モノ語り。

2025年10月5日

 国内外のセレブが訪れる福井県の料理旅館、望洋楼。統括本部長の山本利勝さんは、県の内外で行われる様々なプロジェクトに携わり、地域の魅力を陰から支え続ける心強い存在です。ご縁あって長年お付き合いさせて頂いているのですが、ある時、山本さんからお土産に包丁を頂きました。

 その中には、「研ぎ直し券」が入っていました。これまで気に入った包丁でも、自分で研ぐことはできなかったので、包丁そのもの以上にもらって嬉しいお土産でした。

龍泉刃物 梵天雲龍 改 八角柄 ペティ(写真・鈴木優太)

 その包丁を手がけるのが、福井県越前市の龍泉刃物です。社長の増谷泰治さんにお話を聞きました。

 「祖父が刃物の研ぎ師をしていました。その後、父の代になって包丁の生産を始めました。ステンレス鋼の包丁は1961年から生産を始めました」

 「越前打刃物」は、700年の歴史を持っています。1337年、京都で有名だった刀匠、千代鶴国安が刀剣に必要な鉄と水を求めて、越前の地にやってきたのが始まりだとされています。

 「焼き入れ(鋼を高熱に熱して急速に冷やすことで硬化させる作業)の時に水に沈めますが、水質が良いのでより硬度が上がるとされています。この地域では酒蔵も多いですし、昔から水質が良かったのだと思います」

 転機となったのは、ステーキナイフの制作です。フレンチシェフ浜田統之さんから、2013年にフランス・リヨンで開催される世界最高峰のフランス料理コンクール「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」に出場するので、ステーキナイフを制作してほしいという依頼が入ります。

 増谷さんたちにとっては、初めてのカトラリーづくりでした。試行錯誤の末にステーキナイフを完成させたものの、切れ味の良い包丁をつくってきたために、切れすぎて危ないということになってしまいました。そこで、刃の先を丸くするなど、形状を工夫することによって安全性も担保することで完成させました。

 結果として、浜田さんは出場したコンクールで、日本人で初めて3位に入賞しました。


新着記事

»もっと見る