さらに残る謎
加えて、オルツをめぐっては、上場を果たした後も「循環取引」による「架空売上」の計上が続けられてきた。この意味で、本件は単なる「上場ゴール」を超える事案であるといえる。
考えられるのは、オルツが保有する資金を流出させて枯渇させるまでのいわば「時間稼ぎ」として、「循環取引」による「架空売上」の計上を行っていた、ということである。これが事実であれば、ベンチャー企業をいわば「隠れ蓑」にして、出資や借入れによって資金を集め、集めた資金を分配していたことになる。
これは、株式会社制度、株式市場制度を悪用した組織的な詐欺行為である。粉飾決算やこれを内容とする金融商品取引法違反の罪は、「氷山の一角」にすぎない。
日経平均株価は5万円を超え、かつてない高値をみせている。しかし、そこには「上場ゴール」や組織的な詐欺行為も跋扈(ばっこ)している。その元凶は、本来「企業を支援するため」であるはずの株式市場が「投機の場」となってしまっていることにある。
「巨悪は眠らせない」は造船疑獄事件やロッキード事件を担当した故伊藤栄樹元検事総長の言葉である。現状では依然として「巨悪」は眠ったままであろう。
経営陣と投資家の関係、流出した資金の行方を含めた全容の解明を期待したい。また、事件を機に、株式市場が本来の目的へと立ち戻ることも求められている。
