東日本大震災から15年が経過する。未曽有の自然災害と原発事故は、多くの命と生活基盤を奪い、日本社会に深い傷跡を残した。同時に、この震災は日本人の国家観、とりわけ「国が救ってくれる」という物語を上書きし再び強めた出来事でもあった。復興支援、補償、交付金、各種給付を通じて国家が前面に立った経験は、非常時の対応を超え、平時の政策選好にまで影響を及ぼしている。
非常時に拡大した政府の役割
国家が危機に際して権限と財源を集中させ、役割を拡大するという振る舞いは、日本の歴史の中で蓄積され、日本の統治構造に組み込まれてきた。こうした非常時の設計が、後に平時の枠組みに定着する例は、関東大震災後の帝都復興や戦時統制、東日本大震災後の復興政策にも見られる。
これを財政の側面で捉える際に有用なのが、英国の財政学者アラン・ピーコックとジャック・ワイズマンが提示した「転位効果(displacement effect)」である。戦争や大災害といった非常時には政府支出、ひいては税負担が急拡大し、国民もそれをやむを得ないものとして受容するが、危機が去った後も支出水準は完全には戻らず、高止まりしやすい。社会が一度「これだけの政府規模は必要だ」と学習すると、平時に戻っても、危機発生時以前より大きな政府を当然視するようになる。
