2025年12月5日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年11月14日

 日本銀行が10月29~30日に開いた金融政策決定会合で、追加の利上げを見送った。6会合連続の据え置きに対し、「インフレが収まらず国民生活を苦しめている」「低金利は円レートを下落させ、物価をますます上昇させる」「アベノミクスはデフレ脱却のために行ったものだが、現在はインフレだから前提が違っている」「低金利が生産性の低い企業の新陳代謝を遅らせて日本の生産性を引き下げている」といった批判が出ている。

(ロイター/アフロ)

 要するに、1.現在のインフレに対して金利引き上げで対応すべき、2.円安を抑えるために金利を引き上げるべき、3.低金利が生産性を低下させるから金利を上げるべき、という議論がある。これらの議論を整理したのち筆者の意見を述べたい。

現在のインフレには金利引上げで対応すべきか

 図1は、生鮮食品を除く消費者物価、生鮮・エネルギーを除く消費者物価、食料・エネルギーを除く消費者物価、米類(右目盛りになっている)の対前年同月比を示している。

 たしかに、2025年9月で、生鮮食品を除く消費者物価は3.0%、生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価は3.1%であるが、食料・エネルギーを除く消費者物価は1.3%にすぎない。これに対して、生鮮食品もエネルギーも食品もすべて家計にとっては物価なのだか、これらを除くのはおかしいという反論があるだろう。

 反論は正しいが、生鮮食品やエネルギーや食料価格の高騰に金融政策で対応できるのかという問題がある。生鮮食品は一時的な天候要因で変動する。それに応じて金融政策を動かせば金融政策が安定しない。原油価格は、今年2倍になったからといって来年4倍になる訳ではなく、高いところで落ち着くのが今までのパターンである。


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