*本記事は、『最新 間違いだらけのエネルギー問題』(ウェッジ)から一部抜粋、編集の上掲載しています。
日本の物価上昇率が下がらない理由の一つは円安だ。エネルギー危機が引き起こした大きな物価上昇を受け、米国FRB(連邦準備制度理事会)と欧州ECB(欧州中央銀行)は、インフレ抑制のため2022年に段階的に金利を引き上げた。
一方日本銀行は金利を2024年まで据え置き維持した。その結果、円安が誘発され、輸入品の価格は上昇した。例えば、日本の食料自給率は、カロリーベースでは38%だが、生産額ベースでは61%だ。
つまり食品販売額の約4割は円安の影響を受けた。エネルギー自給率は15%なので、エネルギー価格への円安の影響はさらに大きい。円安の影響を受けた日本のインフレ率は欧州諸国とは異なる動きになっている。
円安で他国より厳しい状況に置かれる日本
インフレに悩まされているのは、主要7カ国(G7)に共通しているが、ロシアのウクライナ侵攻後大きく上昇したエネルギー価格が落ち着くにつれ、インフレも落ち着いてきた。多くの国がインフレに襲われたが、インフレにより生活の状況が悪化していると感じる国民の比率は、国により異なる。フランスの調査会社イプソスがコロナ禍以降の生活状況の変化を尋ねる調査を、先進国と途上国合計主要32カ国について実施し2024年11月に結果を発表している。
日本で「生活がかなり良くなった」とする国民の比率は32カ国中最低の2%しかいない。「少し良くなった」は15%だ。32カ国平均では「かなり良くなった」が11%、「少し良くなった」は22%。
同じ調査では、家計の状況についても尋ねている。日本の「生活にゆとり」がある比率は、32カ国中最低の4%しかない。「生活は大丈夫」は20%だ。32カ国平均の「ゆとり」10%、「大丈夫」27%との比較では、日本の生活状況の苦しさが浮き彫りになる。先進国、中進国のなかでも、日本は他国より経済、家計が厳しい状況に置かれている。


