日本で生活が苦しい世帯が増えている。厚労省の国民生活基礎調査によると、約6割の世帯が「生活が苦しい」としている状態だ。この背景には物価上昇があり、その大きな原因の一つとしてエネルギー価格の上昇があることは、あまり触れられていない。国民の生活を豊かにしながら、エネルギー安全保障や温暖化問題をどう考えていくべきか――。本サイトでもおなじみの国内外のエネルギー事情に詳しい著者が具体的に解説する。
*本記事は、『最新 間違いだらけのエネルギー問題』(ウェッジ)から一部抜粋、編集の上掲載しています。
*本記事は、『最新 間違いだらけのエネルギー問題』(ウェッジ)から一部抜粋、編集の上掲載しています。
企業に深刻な影響を与える
エネルギー価格の上昇
エネルギー価格は、物価にさまざまなルートで影響を与える。ここでは食品、飲料の製造コストを見てみよう。清涼飲料水の製造では、電気料金は大きな比率を占めるが、食品製造業全体でも、原材料費に対しエネルギー支出額は6%に相当するので影響はかなり大きい。また、食品、飲料水ではペットボトル、包装用合成樹脂など石油を原料とするものが多く使われているので、原油価格上昇の影響も受ける。
エネルギー価格は製造の後の輸送費にも当然影響を与える。トラック輸送には軽油が必要だ。鉄道の貨車輸送には電気料金が影響を与える。販売の場面になっても照明、冷蔵、冷凍、エアコンと電気の利用が多く、電気料金が上昇すれば大きな費用負担増につながる。例えば、セブン-イレブンやイトーヨーカドーを傘下に持っていたセブン&アイ・ホールディングスの2021年2月期の水道光熱費1045億円は、2025年2月期には1922億円に84%増えている。販売の現場での大きな費用増は、商品価格に転嫁せざるを得ないだろう。

