コメよりも家計に影響を与えるエネルギー価格
電気料金とガス料金は家計にも大きな影響を与える。総務省の家計調査によると日本の家計の平均消費支出額は、給与、世帯収入の減少に合わせ波を打ちながら減少していたが、2022年から3年連続増加に転じた。
収入が増えていることもあるが、物価上昇が引き起こした否応なしの消費支出増だ。最近の支出の項目を見ると、増えているのは、電気料金、ガス料金、穀類など生活必需品だ。
2025年前半、コメの価格上昇が話題になり、価格引き下げのため政府は備蓄米を随意契約で売却した。2025年5月の2人以上の世帯の平均消費支出額は、31万6085円。内訳を見ると食料8万9541円、その内穀類8688円、コメ3508円だった。前年2024年5月の消費支出は29万328円。食料8万3259円、穀類6845円、コメ1862円だったので、コメへの支出額は、1年間で約2倍になっている。主食のコメの値上がりは目立つが、コメへの支出金額は食料の中では多くはない。麺などの穀類を含めても食料の1割程度だ。穀類、コメよりも支出が多いのはエネルギー関係だ。
電気料金への2025年5月の世帯の平均支出額は、1万2220円。ガス代には5734円が支出されている。電気もガスも季節により支出額は異なる。冬季で支出額の多い2025年3月の電気料金とガス料金への支出額は、それぞれ1万6559円、7000円だった。2024年3月の電気料金とガス料金への支出額は1万3780円と6653円だったので、電気料金だけで1年間で2779円値上がりしている。燃料代の上昇と補助金の変動が原因だが、値上がり額はコメよりも大きい。
2020年を100とする2025年5月の消費者物価の上昇率では、総合指数は111.8、前年同月比3.5%の上昇だ。生鮮食品を除く食品は111.4、前年同月比+3.7%。その内穀類は149.0、前年同月比+28.7、電気料金は124.6、前年同月比+11.3%だ。食品と同じく電気料金の上昇も家計に影響を与えている。家計への影響は、エネルギーがコメ、穀類よりも大きい。
エネルギー価格の上昇は、物価上昇の大きな理由の一つだった。2022年からのエネルギー価格の上昇の原因はロシアによるウクライナ侵攻が引き起こした化石燃料価格の上昇だったが、電気料金の上昇には、もう一つの要因、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)の導入も関係している。詳しくは『最新 間違いだらけのエネルギー問題』を参照されたい。

