G7を初め多くの国がインフレに悩まされているが、中国は大きなインフレを経験していない。この背景には、景気の減速により低迷する国内需要に加え、ロシアに対し制裁を実施していない中国が、主要先進国と異なり、ロシア産の安価な化石燃料の購入を続けていることがある。
欧米諸国がロシア産化石燃料購入量を削減する中で、行き場を失ったロシア産化石燃料をロシアに制裁を課していない中国、インド、中東諸国などが安く買い付けている。コロナ禍以降主要国の電気料金、ガソリン価格は大きく上昇したが、中国では価格に変化はない。2025年7月に欧州委員会がロシアに対する制裁を強化し、その中には化石燃料の価格と輸送に関する制裁強化も含まれているので、中国のエネルギー価格も今後影響を受ける可能性がある。
物価上昇が賃上げを上回る日本
日本で生活状況が苦しいと感じる人が相対的に多いのは、物価上昇が賃上げを上回っているからだ。1990年代中頃にはG7国の中で中位だった日本人の平均所得は、失われた30年の間伸びるどころか、減少している。
民間企業の平均給与は過去最高の1997年のレベルを2025年8月時点では下回ったままだ。他国は成長が続き、給与も伸びたため、日本人の平均給与はG7国の中で2000年頃に最下位となり、いまは韓国にも抜かれてしまった。
所得が伸びない中で、日本も他G7と同じく物価上昇の影響は大きく、実質所得の伸びがマイナスになっている。主要国が経験したインフレを引き起こしたのは、ロシアのウクライナ侵攻を契機としたエネルギー価格の上昇だ。
主要国がロシアへの制裁の一環としてロシア産化石燃料の購入量を削減したことが、需給バランスを崩し大きなエネルギー価格の上昇を引き起こした。なぜエネルギー価格は物価にこれほど影響を与えるのだろうか。詳しくは『最新 間違いだらけのエネルギー問題』を参照されたい。

