日中関係がにわかに緊張状態に入っている。台湾問題というセンシティブな外交イシューがきっかけであるだけにその緩和を見通すことは難しく、とりわけ中国が繰り出す「制裁」措置が日中経済関係に与える影響が心配される事態となっている。
こうした緊張状態はこれまでにも経験されてきたことである。しかし、両国間経済関係の今後については、国際経済情勢の大きな変動をも踏まえて見通しておくべきだと思われる。
貿易関係の現状
まず現状確認を行っておきたい。第1に日中貿易である。詳細統計の得られる2024年の状況をみると、日本にとって中国が第1位の貿易相手国であることは変わっていないが、輸出額では米国に次ぐ第2位であった。一方、中国にとって日本は米国、韓国に次ぐ第3位の貿易相手国であった(注:東南アジア諸国連合〈ASEAN〉、欧州連合〈EU〉を構成国に分解して比較)。
日本の財務省貿易統計と中国の海関(税関)統計を基に「双方の輸入ベース(ドル換算)」でみると、日本の対中輸出は1564.6億ドル(前年比2.7%、以下同)と3年連続で減少、対中輸入は1671.2億ドル(3.9%減)と2年連続で減少している。なお「双方の輸入ベース」を用いるのは、香港経由の貿易が及ぼす影響を相殺して論じるためである。
対中輸出の構成は、電気機器およびその部品が26.6%、原子炉・ボイラー・機械類が22.2%、光学機械から医療用機器を含むその他機器が7.3%と上位3品目で56.1%を占める。対中輸入は、電気機器およびその部品が28.7%、原子炉・ボイラー・機械類が18.3%、衣類及び衣類付属品が3.8%と上位3品目で50.8%となっている。
機械・機器を中心に完成品・部品をやり取りする「水平的貿易関係」であり、その背景には、製造業を軸とした広汎な分業関係、サプライチェーンが構築されている現実がある。
