2025年12月8日(月)

21世紀の安全保障論

2025年12月8日

 台湾有事をめぐる高市早苗首相の発言に対し、習近平国家主席主導の下、中国は沖縄県の日本への帰属に疑義を呈し、国連憲章で死文化した旧敵国条項を持ち出して日本を脅すなど、対日威圧と同時に国際世論への働きかけを強めている。こうした状況に日本のネット上では「いい加減にしろ」「ふざけるな」といった感情的な表現で中国を非難する言葉が飛び交う一方、高市首相の発言や対応を批判する意見も日を追うごとに増え始めている。

日々取材し、歴史的な経緯も知る「新聞」こそが中国との情報戦に対抗できる(首相官邸HPより)

 国内世論の分断は中国が仕掛ける情報戦の目的であり、このままでは中国の思う壺に成りかねない。その愚を避けるために、今こそオールドメディアと揶揄されてきた新聞は、歴史を都合よく解釈し、改ざんする中国の主張に対し、事実を検証するファクトチェックを実施し、日本の主張を国内外に発信する必要がある。

新聞こそ情報戦の先頭に立つ存在

 読者の多くは新聞の影響力に「?」をつけるかもしれない。しかし、発行部数が急減しているとはいえ、ネット上では新聞記事をベースにした情報が日常的に提供、拡散されている。多くの日本人は、紙の新聞を読んでいなくても、スマホを通じて新聞に接していると言っていい。

 今後、新聞が中国の主張をファクトチェックした記事を発信し続ければ、「ふざけるな」といった感情的な短文ではなく、事実に基づいた表現で中国を非難することもできるだろう。と同時に、英語による発信も強化すれば、中国の主張の愚かさを国際社会に伝え、それもネット上で拡散されていくはずだ。

 筆者は読売新聞の記者時代、沖縄・尖閣諸島の国有地化に反発する中国の主張に対し、読売新聞の英字紙「The Japan News」で、「How Senkaku Islands became part of Japan」というタイトルの記事を、紙面1ページを割いて発信したことがある。

 日本が同諸島を領有するに至った歴史的な経緯に加え、明治期に中国漁船が遭難し、同諸島の島民らが、多くの中国漁民を救助したことに対し、当時の中華民国政府から「日本国尖閣諸島の島民」に対して贈られた感謝状の写真なども添えた内容であった。

 その記事がきっかけで、都内にある複数の大使館でレクチャーする機会を頂き、日本が尖閣諸島を領有する正当性を詳しく伝えることもできた。今はネット時代である。しかも国内外で日中対立の行方に関心が集まっている時だけに、日本語と英語による発信は瞬く間に拡散されるはずだ。


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