こうした専門家の歴史研究に加え、サンフランシスコ講和条約で戦勝国は、沖縄をどのように認識していたのかを含め、中国が仕掛ける情報戦による“侵略”を阻止するために、新聞はファクトチェックを急がなければならない。
つけ入るスキを与えてはならない
中国が持ち出してきた国連憲章の「旧敵国条項」も同様だ。国内世論の分断を目的に、旧敵国条項を根拠に中国は許可なく日本を攻撃できると脅しているわけだ。外務省は1995年の国連決議で同条項は「死文化」したと反論しているが、ここでも新聞は歴史的事実に基づく視野の広いファクトチェックができるはずだ。
先日、筆者は台湾を訪問し、総統府国家安全会議や国防部、シンクタンクの専門家らと意見交換する機会を得た。高市首相発言に対する中国の反発や威圧について、台湾総統選などで何度も経験している某高官の言葉が印象に残っている。
彼は「中国はやり過ぎると逆効果になることは、総統選で経験済みだ。だから禁輸措置など特定の産業を厳しく規制する一方で、別の分野の産業には優遇措置を講じるなど意図的に社会を分断しようとする。それが中国の常套手段であり、日本は国内外に正しい情報を発信し続けることが大切だ」とアドバイスしてくれた。
その意図は中国につけ入るスキを与えてはならないということだろう。日本国内の分断を目論む中国の情報戦ははじまったばかりだ。まさに今こそ、政府は冷静に反論する外交姿勢を貫き、その代わり新聞が国内外の研究者らを動員したファクトチェックを実施し、国民に対し、そして国際社会に対し情報を発信し、理解と共感を得ていくことが何よりも重要だと確信する。
