2026年3月20日(金)

日本の縮充化

2026年3月20日

 全国各地で野生動物と人間との軋轢が広がる中、昨年10月に刊行された『動物たちの「増え過ぎ」と絶滅を科学する』(ミネルヴァ書房)の中で、北海道大学名誉教授の齊藤隆さんは、生物学者の視点から、日本の少子高齢化は生物学上の「絶滅の渦」と同じ性質を持っていると警鐘を鳴らす。

(MALTE MUELLER/GETTYIMAGES)

 事実、昨年の出生数は70万5809人。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計より17年早いペースである。この流れには、簡単に抗えない。日本の人口はどうなっていくのか。京都大学経済研究所教授の森知也さんの予測はこうだ。

 「今後、日本で生まれる新生児の数は、楽観的に見ても4200万人。2100年の時点では残り1000万人しか生まれてこないという状態です。人口を維持するという意味において、日本の『余命』は見えており、『健康寿命』をどれだけ伸ばせるかを考えることが重要でしょう」

 21世紀を生きる私たちはこうした本格的な人口減少のとば口に立たされていることは間違いなく、戦後日本が成し遂げた右肩上がりの経済成長に人口増加という「これまでの前提」の延長線上で議論を重ねても、もはや答えは出せないだろう。

 持続可能性に黄信号が灯り始めているのは、人口だけではない。「これまでの前提」の一つである「47都道府県」という枠組みは、果たして未来永劫、変わらずに存続できると言い切れるのだろうか。

 「日本列島を、強く豊かに。」というキャッチコピーを掲げ、先の衆院選で大勝した自民党・高市早苗政権の政権公約の一つに「地方が日本経済のエンジンに」がある。地方に大規模な投資を呼び込み、産業クラスターを戦略的に形成する「地域未来戦略」を推進するという。もちろんそれらを否定するつもりはない。ただ、誤解を恐れず踏み込んで言えば、従来の戦略の〝焼き直し〟のように映るのは気のせいだろうか。

 総務省自治行政局行政課長の植田昌也さんは「自治体の将来を巡り、以前は道州制などの議論もされましたが、近年は『仕事の仕方を変える』ことが中心で、これまでと異なる前提に立った本格的な議論は行われていません」と率直に語る。

 「これまでの前提」が通用しなくなっている以上、高市政権は、公約の実現にとどまらず、「日本列島を、強く豊かに。」という理念のもと、変化する社会を踏まえ、地域のあり方をどう再構築していくのか、政治主導で議論を加速させていくことが求められている。それこそが政治に託された使命であろう。


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