地域ならではの「強み」と
新しい「豊かさ」の追求へ
地域のあり方は多様であり、グラデーションがある。しかし、都市へ若者を送り込んでいる多くの「地方」では、現在進行形で、縮小の一途をたどることが避けられない状況だ。
これに対して、よく争点になる「解決策」がある。「まちの中心部に人を集約する」という発想だ。だが、これも易々と提案できる話ではない。岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域准教授の氏原岳人さんは「中山間地域には第一次産業を担う人が多く住んでいます。『効率性』の議論を適用すると、至る所が撤退する方向性を選びかねません。だからこそ、国土の保全という観点から『守るべきところを守る』という政策が求められています」と話す。
一方で、「人が減る」現実に向き合えない構造もある。東京都立大学教授の饗庭伸さんは、日本社会に存在する根強い課題をこう指摘する。
「被災された能登の人たちと話すと、この地域に人口は増えないことを心底理解されていて、復興に関わる話でもぜいたくを言いません。
ただ政治家をはじめ、公的な立場にある人の多くは『人口を増やそう』『経済を成長させよう』と考えがちです。なぜなら、景気の良い内容の提案を掲げなければ支援してもらえないからです。そこから抜け出さなければ、理想と現実はいつまでたってもすれ違ったままです」
つまり、今求められているのは、必要なものを継ぎ足し続ける「足し算」の発想ではなく、「これまでの前提」が変わったという現実を直視し、その中で、真に必要なものを見定めるという良質な意味での「引き算」の発想だろう。それこそが昭和の時代とは異なる社会を実現するカギになるのではないか。
また、いくらテクノロジーが進歩しても、変わらぬことがある。饗庭さんは言う。「地方には、人と人とが結びつく理由があふれています。都会はその逆で、自分たちが住むまちの清掃であっても、外注化する傾向が強い。お金では解決できない、市場化できないような、文化的・精神的な結びつきが、その地域の強みになるのです」。同様に、「都市と地方」の結びつきやそれぞれの強みと弱みとを相互に補完する関係性は、ますます重要になってゆくだろう。
地方創生、地方活性化は誰からも賛同されやすい崇高な理念として語られてきた。ただ、それらの議論は東京発、都市を起点とした発想に偏りがちで、「地方も都市と同等であるべき」という前提に縛られすぎてはいないだろうか。
しかし、「地方」にはその地域ならではの生き方がある。多様な人々が暮らし、独自の仕事があり、文化や伝統、歴史、風土が息づいている。そうした日々の営みの上にこそ、「地方」の価値があると言っても過言ではない。今求められるのは「新しい豊かさとは何か」という発想の転換ではないか。そのヒントを、各地の実践や、既存制度の見直しといった視点から、探っていきたい。
