中国で行われた米中首脳会談および実務ランチが5月15日、終了した。限られた中であるが、公に流された両国首脳の映像を追うと、「攻め」の習近平国家主席(以下、初出以外、敬称および官職名略)に対して、「守り」のドナルド・トランプ米大統領という印象が際立った。米中首脳会談が一旦延期された事情も含めて、「攻め」と「守り」の関係は予想された。
中でも注目すべきは、この2人の用いた交渉カードの力関係である。トランプはホルムズ海峡の開放、習は「祖国統一」という不均衡な目的の実現のために用いる交渉カードである。
今回のカードは何であったのか。今後、11月3日の中間選挙に向けて、両氏の交渉カードのパワーはどのように変化していくのか。米国民は、イランとの戦争におけるトランプの交渉力をどのように評価しているのか。以下で説明していこう。
台湾を交渉カードにするトランプ、イランを交渉カードにする習
今回の米中首脳会談を交渉カードという視点でみると、今後、米中は新たなカードで駆け引きをすることが分かってきた。トランプが台湾を、習がイランを交渉カードとして利用する戦術である。米中関係は、この取引の合意が成立するのかに焦点が当たることになる。
トランプはワシントンに戻る大統領専用機エアフォースワンの中で、記者団の質問に対して台湾への武器売却が中国に対する「交渉材料」になることを明かした。トランプには、武器売却を「遅らせる」「抑制する」「停止する」の選択肢があり、彼はこれらの選択肢と引き換えに、中国がイランに対して圧力をかけて説得することを期待しているのである。
一方、習は米国が台湾への武器売却に関して、慎重な態度をとる見返りに、ホルムズ海峡を開放するようにイランに圧力をかけることにコミットする。ただし、そうなったとしても、中国はイランを見捨てはしないだろう。イラン産原油の継続的な輸入が必要不可欠であるからだ。
加えて、今年1月の米国によるベネズエラ侵攻とニコラス・マドゥロ大統領拘束において、中国は口では米国を非難したが、具体的な行動をとらなかった。それに関して、親中の国々は、中国は経済的に自分たちを利用するが、危機的状況に直面した時には自分たちを守らないと不信感を抱いたと言う。
このような理由で、中国は米国に対してイランに圧力をかけると約束したとしても、「ポーズ」のみで、最大の圧力をかけることは決してしないだろう。従って、トランプの台湾への武器売却を交渉材料にしたディール(取引)が“見せかけで”成立しても、米国側にとって効果は低いと言えそうだ。
パワーアップする中国の交渉カード
トランプは9月24日に、習を米国に招待すると発表した。その狙いが中間選挙を前に、今年2回目の米中首脳会談を開き、有権者に成果をアピールすることにあるのは明らかだ。しかし、その考えは楽観的過ぎる。中間選挙が近づけば、中国の交渉カードはパワーアップするからだ。中国が1回目の米中首脳会談で、多くの取引やオファーをしなかった理由はここにある。
交渉カードは時間と共に、パワーアップをするしダウンもする。時間軸によって価値が変化するのだ。
例えば、中国は、レアアースの輸出規制や、中西部に住むMAGA(米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)の農業従事者が作った米国産大豆の輸入の停止や、買い控えの交渉カードを保有している。しかし、現時点でそのカードを切るよりも、中間選挙直前にチラつかせるないし実行する方が、はるかに効果的である。中間選挙に向けて、同じカードがパワーアップしていくわけだ。
習には、訪米の延期およびキャンセルのカードがある点も看過できない。中間選挙を直前に、トランプを困惑させられるカードである。これも「直前」にチラつかせば、交渉を有利に導く効果が出てくる。
一方、米連邦最高裁判所と国際貿易裁判所で、違憲ないし無効とされたトランプ関税は、昨年と比較すると、パワーダウンして、交渉カードとしての価値が下がった。
