2026年4月12日(日)

トランプ2.0

2026年4月12日

 ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)は4月7日(現地東部夏時間)、自身のSNS(交流サイト)でイランと2週間の停戦に合意したと発表した。今後の焦点は、米国とイランの直接交渉に移る。

 本稿では、まずトランプの「リーダーシップ論」について述べ、次に彼のイランとの交渉戦術について考えてみる。最後に、米国側の交渉チームを率いるJ・D・バンス副大統領について紹介する。

8日、ワシントンDCで行われた反戦デモ(Matrix Images/アフロ)

トランプの「成功至上主義」

 トランプは3月27日、南部フロリダ州マイアミで行った演説後の記者団からのリーダーに関する質問に対して、リーダーは「勝つ」ことが重要であると強調したうえで、「多くの敗者がいる。私は自分の周りに敗者がいるのが好きだ」と回答した。その理由は、自分を気持ちよくさせてくれるからだと言う。

 また、トランプは「自分の成功物語を聞く人々が好きだ」とも述べた。裏返せば、他者の成功物語には耳を傾けたくないのかもしれない。「自分=勝者」および「他者=敗者」の構図を作るために、自分のポジションを利用している。さらに、トランプは「成功すれば、人々を導くことが容易になることを見つけ出した」と自己の経験に基づいて語った。

 彼の「成功至上主義」の中で最も重要な地位を占めるのが、「勝利」である。リーダーは人々に行動変容を起こすが、トランプはそれには成功が不可欠であると信じており、勝利がより良いリーダーを作ることを助けると言うのだ。

 では、トランプはイラン戦争に勝ったのか。

焦点はホルムズ海峡の扱い

 トランプは停戦後、「米国の勝利」とアピールしているが、米メディアはホルムズ海峡が開放されないままでは、「敗北した」とみなす。米国は、イランに対して圧倒的な軍事力を行使しても、同海峡を開放できなかった。そこで、3月上旬にはイランに無条件降伏を求めたトランプであったが、仲介役のパキスタンが提案した2週間の停戦を一旦受け入れ、軍事力の行使から交渉ないしディール(取引)に舵を切らざるを得なかった。

 ホルムズ海峡はイラン戦争の「勝利か敗北」「成功か失敗」を決めるシンボル的な存在となっている。トランプはパキスタンの首都イスラマバードで4月11日から始まる交渉を前に、ホルムズ海峡の「合弁事業」の可能性について述べた。その狙いはどこにあるのか。

 例えば、イランと米国がホルムズ海峡を通過する船舶から通航料を徴収し、利益を配分する。イランは復興資金として使い、米国は利益を上げる。トランプは、ホルムズ海峡を利用するヨーロッパ諸国や日本、韓国などから通航料をとり、イラン戦争に協力しなかった同盟国や友好国に対して「罰」を与えたいのだ。

 また、ホルムズ海峡をイランと共同管理ができれば、米メディアはトランプにイラン戦争「敗北」のレッテルを貼らないと計算しているのだろう。敗北のレッテルを貼られてしまうと、11月3日の中間選挙に向けて大きな負の要因になるからだ。

 もし米国とイランとの交渉で、ホルムズ海峡が米国とイランの共同管理下に置かれることになれば、「文明をまるごと滅ぼす」と最大の脅しをかけられたイランは、トランプの「中東の黄金時代」を実現するパートナーになることになる。


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