交渉による成功
米国は、4月11日からイランと仲介役であるパキスタンの首都イスラマバードで交渉に入るという。パキスタンは昨年、トランプをノーベル平和賞に推薦したので、彼は同国を好意的にみている。
しかし、パキスタンは中国と「全天候型戦略協力パートナーシップ」を築き、軍事、経済および政治において非常に緊密な関係を保っている。パキスタンにとって、中国は最大の武器供給国であり、経済面ではCPEC(中パ経済回廊)のプロジェクトにおいて、中国はパキスタンのグワーダル港を開発および運営を行いインド洋へのアクセスを手に入れた。
米国はイランと直接交渉を行うのだが、パキスタンの背後には中国の存在と影響力がある。トランプはイラン産原油をコントロールして利益を獲得し、中国が輸入していたイラン産原油を抑え、ディール(取引)のカードにする思惑があるようだが、簡単ではないだろう。
まず、最初に交渉のチームメンバーの選定がある。スティーブン・ウィトコフ特使とトランプの娘婿ジャレッド・クシュナー氏に対するイラン側の信頼度は、「ゼロ」とみてよいだろう。核開発を巡る交渉の最中―しかも順調に進んでいると言われていたのであるが―「奇襲攻撃」を受けたからだ。
イラン側が交渉相手に望むのは、ベネズエラ侵攻に反対し、トランプの核となるチームから外れたとみられているJ・D・バンス副大統領だろう。トランプは今回の戦争で「神は米側の味方だ」と述べたのに対して、バンスは明確に賛成しなかった。バンスはいわゆる「本MAGA」で、新たな戦争や他国への内政干渉と体制転換に反対である。トランプは記者団に「J・Dとは哲学的に少し違う」と、両者の間に考えの相違があることを認めた。
ただ、イランとの交渉では、トランプは3人を使い、ウィトコフとクシュナーに「悪い警察官」を、バンスに「良い警察官」を演じさせる交渉戦術をとるかもしれない。イランに対して、ウィトコフとクシュナーにハードでタフな交渉を行わせ、逆にバンスにはソフトでイラン側に感情移入をみせる交渉をさせる。イラン側がウィトコフとクシュナーの意見を拒否し、バンスの考えに耳を傾ければ、トランプの罠に嵌ることなる。こうして、トランプは交渉で成功を収める道を探っている。
バンスはイラン側と交渉をするのだが、「イスラエルファースト(イスラエル第一主義)」で「Make Israel Great Again:MIGAイスラエルを再び偉大にする」と見られているウィトコフとクシャナ―とも「交渉」し、彼らを説得しなければならないかもしれない。身内にも交渉相手がいるのだ。
さらに、トランプはこれまでキャリア外交官を排除してきた。イランとの交渉では、流暢なペルシャ語を話し、イラン人の交渉の特徴を十分に把握しているキャリア外交官、いわゆる「異文化ネゴシエーター」のプロが必要だ。
