2026年3月28日(土)

トランプ2.0

2026年3月26日

 ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)は、初期段階でイランとの戦争は4~5週間続くと語ったが、戦争は4週目に入った。軍事行動開始後、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を30分以内で拘束し、任務を完了したのと比べると大きな違いだ。

 イラン攻撃から約4週間、トランプは二転三転させてきたが、最近はNATO(北大西洋条約機構)や中国、日本、韓国などに対してホルムズ海峡における海上航路の安全確保のために、艦艇派遣などの支援要請をしている。同時に、自身のSNS(交流サイト)に、支援は不必要だと投稿し、メッセージが一貫していない。一体、トランプのメッセージの真意はどこにあるのだろうか。

なぜ一見矛盾するメッセージが必要なのか?

 トランプは3月20日(現地時間)、自身のSNSにイランに対する軍事作戦に関して「段階的に縮小を検討する」と投稿した。また、「ホルムズ海峡は、他の諸国によって守られ、警備されなければならない」とも述べた。

 その一方で、ロイターは、米国防総省がイランでの戦争資金2000億ドル(約31兆円)を連邦議会に予算要求をするために、ホワイトハウスに承認を求めたと報じた(電子版3月19日付)。トランプは、この額について「非常に少額である」と言っている。「さらに、各米メディアは、同省が数千人規模の海兵隊部隊や強襲揚陸艦などの中東への追加派遣を決めたと報じた。

 トランプと国防総省の言動は、軍事作戦「縮小」と「強化」であり相反する。なぜ、一見矛盾するメッセージが必要なのか。

 まず、国際的には「軍事作戦縮小」は、原油価格高騰を抑え、世界経済、殊に米国経済の動揺を防ぐ狙いがある。国内的には、物価高が支持の減少をもたらすリスクを回避する意図がある。

 軍事作戦縮小とホルムズ海峡における他国による警備の要請は、イラン戦争に反対する一部のMAGA(米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)に歓迎されるメッセージでもある。彼らは、トランプを「新たな戦争を起こさない」「体制転換をしない」という公約を破ったと批判し、「彼はアメリカファースト(米国第一主義)ではない」と非難している。

 そこで、トランプはMAGAに入った亀裂の修復を狙って、イラン戦争は終局に向かって動き始めているという軍事作戦縮小のメッセージを彼らに送ったのだ。今後は米国ではなく、ホルムズ海峡からの原油に依存しているNATO、中国、日本および韓国などが同海峡で警備に当たり、米国は関与しないというメッセージを含めた。そうすることで、世界の出来事への干渉ないし介入を好まないMAGAからの批判を弱める効果を狙ったと考えられる。

(JDawnInk/gettyimages)

トランプの内面

 他方、対イランの軍事作戦強化からトランプの内面をうかがうことができる。

 トランプはイランのミサイル能力破壊や海軍の壊滅など軍事的目的の達成を強調しているが、膨大な戦費や兵器の在庫不足が指摘されている。そのような状況の中で、トランプは、イラン戦争で死亡した米兵士の遺族から「任務を完了してもらいたい」と告げられたと語った。となると、連邦議会への戦争資金の追加予算要求と米軍増派は、遺族や支援者には納得がいくだろう。

 ただし、トランプのこの発言の真意は、イランとの戦いを正当化し、継続させるためのものであったかもしれない。

 ちなみに、英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2026年3月13~16日実施)によれば、「イランに地上軍を派遣することに賛成か反対か」という質問に対して、14%が「賛成」、64%が「反対」、21%が「分からない」と回答した。ところが、MAGAに限ってみると、35%が「賛成」、36%が「反対」、29%が「分からない」であった。MAGAは地上軍派遣については約3分の1ずつに分かれている。

 また、同調査では、「米国はいくつかの目的を達成できなくてもできるだけ早く戦争を終わらせるべきか、それともすべての目的を果たすまで戦いを続けるべきか」という質問には、61%が「早期に終わらせるべき」、24%が「すべての目的を達成するまで継続すべき」、15%が「分からない」と答えた。しかし、MAGAは30%が「早期の戦争終結」、58%が「すべての目的達成まで戦争継続」を支持した。残り12%が「分からない」であった。MAGAはすべての目的達成と戦争継続を重視している。

 加えて、以前にも述べたが、トランプには軍事的目的に加えて、政治的目的が存在する(ウエッジ・オンライン「イラン攻撃に消極的な『本MAGA』バンス副大統領の存在とトランプ大統領の願い―本音は『G1』」参照)。ベネズエラ産原油を抑えたように、イラン産原油もコントロールする。そのうえで、イラン産原油を輸入している中国に対して、同国に対する原油供給をディール(取引)のカードにするという政治的目的を果たしていない。

 また、ホルムズ海峡の開放なしに、勝利宣言をすることもできない。宣言をすれば「敗者」になるからだ。しかし、オリジナルのアメリカファーストを支持するMAGA、即ち「本MAGA」は歓迎するだろう。

 さらに、トランプが最も重視していると思われる自身と一族の利益の獲得並びに側近、献金者および大企業の利益の提供-支持の見返り―という個人的目的も達成していない。つまり、トランプは「金の循環」のシステムをイランで構築できていない。

 彼は自身のSNSに、「(イランの)パイプラインだけは残す。パイプラインの再建には何年もかかるからだ」と投稿した。個人的目的を成し遂げるにはパイプラインが必要であるからだ。

 最近になって、トランプとベンヤミン・ネタニヤフ首相との間に「温度差」があると報道されるようになった。その1つがイスラエルによるイランの油田攻撃である。これに対してトランプは、激怒したと言う。彼は、油田やパイプラインへの攻撃に反対している。ここにもトランプの個人的目的が見え隠れする。

 戦争資金の予算要求と米軍増派は、政治的・個人的目的を諦めることができない今のトランプの現れである。さらに、トランプの内面をみていくことにしよう。


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