サッカーワールドカップ(W杯)2026北中米大会の米国戦の初戦が6月12日、ロサンゼルスで開催された。トム・クルーズ、ビル・ゲイツ、ジョージ・ルーカス、ベッカム夫妻ら多くの有名人の姿がスタンドにあった。W杯において開催国の初戦はその国の国家元首が出席するのが通例となっているにもかかわらず、トランプ大統領の姿はなかった。
もちろん、トランプもW杯を重視していないわけではなく、米国戦前日に米国代表に電話をして、激励のメッセージを送ってはいた。また、ニューヨーク近郊のスタジアムで行われる予定の決勝には姿を現し、誇らしげに自らトロフィーを優勝チームに手渡すだろうというのが大方の見方である。
「チケットはビザではない」
米国でサッカーW杯が開催されるのは1994年以来32年ぶりである。前回は米国単独開催であったことや、米国にプロサッカーリーグは存在しない時期であったことなど、大会を巡る状況は当時とは随分と異なっている。
何より社会の雰囲気が違っている。当時は冷戦が終結したばかりで、米国がリーダーとしてグローバル化が進んでいくだろうという楽観論があふれていた。同時多発テロ以前ということで、セキュリティや移民対策も緩かった。経済的格差も今ほど広がっていなかったし、フェイクニュースなどによる分断ももちろんなかった。
今回のW杯においては、トランプ政権の厳しい移民政策が大会運営に大きな影響を与えている。ソマリアは入国禁止対象の19カ国の一つということで、ソマリア人審判が正当なビザを持ちながら入国を拒否された。
他の国々のサポーターたちも、たとえ入国禁止の対象でない国の国民であっても、厳格なビザ審査のために、試合に間に合わない可能性が出てきている。ルビオ国務長官は、「チケットはビザではない」と述べ、例えチケットをもっていても米国入国が約束されていると考えるのは誤りであると強調している。
加えて、トランプ政権関係者は、試合会場に移民・税関捜査局(ICE)を派遣すると繰り返し述べており、観客やスタジアムの従業員、開催都市の住民などの間で波紋が広がっている。ミネアポリスやロサンゼルスにICEが派遣された時に発生したのと同様のトラブルが発生することが懸念されているのである。ロサンゼルスのスタジアムで働く労働者組合は、大会中の「もしICEが労働者の安全を脅かしたり不当な摘発に現れたりした場合、即座に仕事を放棄する」という異例の契約条項を承認したほどである。
