「後始末」と「リーダーシップの欠如」
トランプはあるジレンマに陥っている。NATOをはじめとする他国にホルムズ海峡における海上航路の安全確保の支援をさせる。率直に言ってしまえば、米国の後始末を押し付けようとしているのだ。
イランとの戦争は、自分が描いたシナリオとはかなりかけ離れてきたからだ。トランプは、自分の意のままになら何この戦争に飽きてしまったのかもしれない。
彼は、キューバを次の標的にしている。マルコ・ルビオ国務長官がすでにキューバと交渉を行っているが、目に見える成果は出ていない。政権のトップを拘束したベネズエラのシナリオを描いているのか、イラン戦争のように大規模な軍事攻撃を行うのか、ディールを成立させるのか、それともキューバの自滅を待つのか、トランプには選択肢がある。
いずれかの選択肢を用いて、キューバの民主化を図れば、トランプにとって最大のレガシー(政治的功績)になり、それを切望していることは十分考えられる。しかも、「実利」を求めるトランプには、キューバの観光業や不動産も魅力的だろう。
以前も書いたが、キューバとの交渉で主要な役割を果たしているルビオは、両親がキューバからの移民で、父親はマイアミでバーテンダーとして働き、母親は清掃の仕事をしていた(ウエッジ・オンライン「ベネズエラの地上作戦実施―新たな戦争をするトランプ、なぜトランプは『アメリカファースト』を“捨てた”のか」参照)。ルビオにとって、キューバの民主化は「夢」である。
ルビオは今回のイラン戦争について、記者団に「イスラエルが働きかけてきた」と述べ、米国にはイラン攻撃の計画はなかったと明かした。この発言は波紋を呼んだ。トランプがイスラエルに乗せられた、あるいは誤報に騙されたとまで言う者もいる。
とはいうものの、トランプはエプスタイン文書、イラン産原油およびレガシー作りなどの様々な要因が絡み、「自ら乗っかった」とも言える。
逆にキューバに関しては、ルビオがトランプに影響を与え、レガシーの偉大さを吹き込み、彼を本気にさせた可能性は排除できない。
エコノミストとユーガブの全国共同世論調査(2026年3月20~23日実施)では、55%がイラン戦争でイスラエルが「利益を得る」、33%が「損害を被る」、19%が「影響なし」と回答した。それに対して、30%がイラン戦争で米国が「利益を得る」、59%が「損害を被る」、11%が「影響なし」と答えた。米国民は今回の戦争で、利益を得るのは米国よりもイスラエルであるとみている。
また、同調査では「キューバ政権を軍事力で倒すことに賛成か反対か」という質問に対して、22%が「賛成」、55%が「反対」、23%が「分からない」と回答し、「反対」が「賛成」を33ポイント上回った。ところが、MAGAに絞ってみると、52%が「賛成」、24%が「反対」、24%が「分からない」で、「賛成」が「反対」よりも28ポイント高く逆転する。MAGAがキューバ政権に対して軍事力行使を容認しているという結果が、トランプの背中を押している。
ただ、前回の調査と比較すると、MAGAは「賛成」が4ポイント減り、逆に「反対」が4ポイント増えた。
イランから西半球に戻り、次の標的のキューバに時間とエネルギーを注ぎたいトランプだが、ホルムズ海峡における支援に関して、他国はトランプの後始末に拒否反応を示し、シナリオ通りに進んでいない。
トランプは世界にリーダーシップの欠如をさらけ出してしまった。イランとキューバの狭間で、トランプの心理的葛藤は続く。
