24時間放送のニュースチャンネル・CNNの創業者である、テッド・ターナー氏が5月6日に87歳で死去した。「We won’t be signing off until the world ends」(世界が終わるまで放送を止めてはならない)という、ターナー氏のあまりにも有名な言葉に伴って、1980年に放送を開始したCNNはメディアの世界を一変させた。メディアの変革者として、その歴史に刻まれる。
CNNの創業者としてのターナー氏の業績は大きく、世界のメディアがその死を悼んだ。変革者は潮流を読む天才でもある。高齢と難病もあって、実はターナー氏はCNNを含めた、多様な映画やカトゥーンなど専門チャンネルを擁する「ターナー・ブロードキャスティンググループ」を96年、タイムワーナーに売却して実質的にはメディア界から身を引いていた。
米国の三大ネットワークの報道番組に対抗して、ケーブルテレビに24時間ニュースを流し続けるという破天荒な手法で戦いを挑んで勝利した後、映画などの専門チャンネルなども手がけたが、インターネットによるさまざまな配信つまりNetflixなどの登場を予測していたかのようにメディア界から去ったのだった。
「メディアの帝王」の面目躍如である。
タイムワーナーはその後、16年にAT&Tに売却された。AT&Tのメディア戦略の再編によって生まれたのが、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)である。
メディア界の大転換期が、タナー氏が最後にみた風景だろう。つまり、自らが創業したCNNかつハリウッド映画の巨大スタジオを持つWBDをめぐって、世界最大の映像配信のプラットホームに成長したNetflixとパラマウント・スカイダンスが繰り広げた買収の争奪戦だったろう。世界のメディアは、トランプ政権に批判的な報道姿勢を貫いてきたCNNの去就に焦点がいったのはやむを得ない。
地上波からケーブルテレビ、衛星放送そしてインターネット(IP)によるコンテンツ産業の衰退の流れの中で、ターナー氏の業績を位置づけるのが正しいのではないか、と筆者は考える。CNNを過小評価しているわけではない。
ここでは、世界と日本の放送について、詳細かつ総覧できる唯一の大著である『20世紀放送史』(上下、日本放送協会刊、2001年)を参照しながら考察していきたい。
