『陽の当たる場所』(モンゴメリー・クリフト、エリザベス・テーラー出演、1951年)や『ジャイアンツ』(ジェームス・ディーン出演、1956年)によって、アカデミー賞監督賞を受賞したジョージ・スティーヴンス監督は、第二次世界大戦に従軍して映像をとらえた。
ナチスのユダヤ人を使役に使い、虐殺行為もあったダッハウ強制収容所で、連合軍が解放した映像や、パリを解放すると、ドイツ人に協力した女性の髪を丸刈りにする市民の群れなど、「映像の世紀」を象徴するシーンの数々を残した。
NHK・映像の世紀シリーズは『高精細スペシャル ヨーロッパ2077日の地獄』のタイトルで、7月末から8月初旬にかけて『第1部 ドイツ国民は共犯者となった 1939-1940』『第2部 独ソ戦 悲劇のウクライナ 1941-1943』『第3部 国民を道連れにした独裁者 1944-1945』を放送した。当時の35ミリフィルムの映像を高精細化すると同時に、カラー化できるものは色彩も再現してみせた。
各国から集めた映像は、プロパガンダ映画の場合にはその表示が現れた。戦闘シーンやヒトラーらの戦時の指導者の映像は、プロパガンダの意図をもって撮影された。
「監督生命を投げ打つ」覚悟で、西部戦線に従軍したジョージ・スティーヴンス監督が客観的な視線を持って撮影した映像も、監督の至言である「すべての映像はプロパガンダだ」といえる。
勝者による敗者の映像、しかもナチスに対して「パリ蜂起」をはじめとしてパルチザンの戦いをしていたフランス国民も、ナチスが敗れるとその協力者に躊躇なく暴力をふるった。
「映像の世紀」と呼ばれた時代の第二次世界大戦は、映像のみでは解明できない。
