2026年2月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年2月23日

 2026年1月24日付フィナンシャル・タイムズ社説が、トランプの世界は暗黒の世界だ、グリーンランドで若干引き下がったが古い秩序の破裂は進んでいると述べている。

ドイツのミュンヘンで会談する米国のルビオ国務長官とドイツのメルツ首相(ロイター/アフロ)

 今の世界は、1週間毎に感覚が異なる。米国大統領は、経済の威圧を通じて、欧州の同盟国から領土を奪取するとして脅した。彼は、今では一部後退し、西側同盟は辛うじて持ちこたえている。

 しかし、同盟国や規範を無視するトランプの姿勢は、根本的なものが変わってしまったと思わせる。これがトランプの世界で、危険な世界だ。

 もちろん、1月21日にトランプがグリーンランドを武力で奪取する可能性を示唆した発言から引き下がったのは朗報である。その後、トランプは、グリーンランドへの野心を阻止する欧州8カ国へ関税賦課の脅しも撤回し、取引の枠組みができたと述べた。

 欧州の指導者達は、これまで取れなかった反抗の姿勢をとった。そして、市場は動揺し、欧州が米国に痛みを与える構えを見せた状況に直面して、トランプは一歩譲った。

 実際、トランプにとっても、ダボスの1週間は全面的な成功ではなかった。週末を迎えた時点で、グリーンランド「所有」に近づいたとは言えない。ガザの監督機関から、国連に代わる存在を目指す組織へと変形してきたトランプの「平和評議会」構想は、数十の開発途上国や独裁国家を引きつけたにとどまった。民主主義の同盟国の多くは、インドやブラジルといった新興大国とともに、距離を置いたままだ。

 しかし、これらは何れも大きな安心にはならない。グリーンランド危機は容易に再燃しうる。枠組み合意の条件や、それが本当にトランプを満足させるのかは不透明だ。さらに、同盟国の権利を踏み躙ろうとし、ダボスでの演説で欧州に対する軽蔑を露にしたことで、欧州や北大西洋条約機構(NATO)の同盟国と米国との信頼は、深刻に傷ついた。

 二つの大きなリスクがある。第一は、トランプが次に何をするかだ。トランプは、ベネズエラ大統領拘束の成功で勢いづき、自らと米国の力への自信と相まって、益々直感で行動する傾向を強めている。

 彼がどこへ向かうのか誰にも分からない。いずれ深刻な誤りを犯すかもしれないし、その代償は世界の他の国々が支払うことになるだろう。

 第二のリスクは、トランプの行動が他国を如何に増長させるかに関係する。ロシアや中国は、大国が自らの勢力圏で好きなように振る舞い、さらには領土を奪取しても容認されるシグナルを見つけようとしている。同時に、トランプは、これまで他の大国を抑制するためにあった米国主導の同盟網を損なっている。


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