2025年12月5日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年8月19日

 石破茂首相による全国戦没者追悼式の式辞が波紋を広げている。「歴史問題」が再び日中外交の焦点へと浮上しつつある今、不用意な発言は大きな問題へとつながりかねない。

全国戦没者追悼式の式辞で、石破首相は13年ぶりに「反省」という言葉を使った(首相官邸HPより)

石破首相の式辞は何が問題だったのか

 8月15日、全国戦没者追悼式が開催された。席上、石破茂首相は式辞を読み上げたが、そこには「あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばなりません」との一節があった。全国戦没者追悼式式辞で「反省」という言葉が使われたのは2012年以来であり、大きなニュースとなった。

 今年は戦後80周年という節目の年にあたる。50周年の村山談話、60周年の小泉談話、70周年の安倍談話と、日本は10年おきに首相談話を発表してきた。石破首相も談話発表に意欲を示していたが、与党内の反発により見送られたと報じられている。

 7月に実施された参議院選挙で、「日本人ファースト」を掲げた参政党が躍進したこともあり、石破首相が談話で日本の戦後責任を強く打ち出せば、自民党の支持率がさらに低下するとの判断もあっただろう。

 ただ、支持率以外の判断も働いたのではないか。安倍晋三元首相は「右より」とのイメージが強いが、実は安倍談話は一方に偏らない、絶妙なバランスの産物と評価されてきた。

 日本国内の保守派とリベラル派、国際関係への配慮、村山談話や小泉談話など過去の談話の継承……。多方面に配慮し、それぞれの立場の人々が拒絶するほどの反発はもたらさないような内容となっている。


新着記事

»もっと見る