この中国の外交姿勢は基本的には変わっていないのだが、「抗日戦争勝利80周年を通じて中国共産党の正統性を高める」ことはより高い優先順にある。つまり、中国共産党としては、自身の正統性を高めることが目的なのだが、中国人民がその狙い通りに受け取ってくれるかとなると、話は別だ。
中国人の受け止め方
抗日戦争勝利80周年を祝うムード醸成のために、抗日戦争に関する映画やドラマが数多く放送されている。南京大屠殺の”真実”を伝える人々を主人公に据えた映画『南京写真館』は8月17日時点で興業収入25億元(約500億円)を突破。公開期間延長も決まり、動員はまだまだ増えそうだ。
筆者はまだこの映画を観ていないのだが、中国の友人からは作品としてレベルが高い、よくできた映画だとの評価を聞く。中国共産党の主張を伝える映画を、中国語で「主旋律映画」と呼ぶ。そうした作品には中国共産党の下部組織や学校、退役軍人などが集められ、市場の論理を超えた観客動員を集めることも多い。
ただ、すべての主旋律映画がヒットするわけではない。同時期に公開された抗日運動映画「東極島」は大惨敗している。評判が良い映画に、後から応援動員がやってくるというパターンが多い。
よくできた映画ということで、中国のネットを見ても多くの感想が書き込まれている。日本人をひたすら罵倒するようなものが多く含まれているのは通常運転だ。昨年は中国で日本人児童が殺害される悲惨な事件も起きたが、反日感情の高まりがそうした悲劇を再び招くことが懸念される。
また、冷静な書き込み、普段から日本嫌いではないが、映画を見て改めて日本に対する怒りを感じたという書き込みも多い。中国が侵略されたという歴史を振り返れば怒りを抱くのは当然としても、「日本は謝罪していない」「教科書に南京大虐殺が載っていない」といった、事実とは異なる認識も多い。
