「マードック旋風」は、インターネットが急速に普及する時代の前であり、「ABEMA」はインターネットの普及がベースにある。しかしながら、マードックによる構想にテレビ朝日が乗っていれば、デジタル化に遅れた日本のテレビや新聞に大きな影響を与えた可能性があったかもしれない。
動画配信サービスが覇を争う
メディア業界に衝撃を与えたCNNがスタートしてから、わずか半世紀近くの時しか刻んでいない。デジタル情報革命は「ストリーミング」という形で、メディア界に何度目かの大きな波が押し寄せている。NetflixやYouTube、ディズニーチャンネルやHuluなどの配信プラットホームである。
放送の世界の風雲児だったターナーが亡くなり、マードックが影の実力者といわれているが現役を引退した形である。ふたりが切り開いたメディアの地平に新たなサービスが勃興しているのである。タナ―が最後にみたメディアの風景と、マードックが今みている風景について、ふたりの感想を聞きたいところである。
米国の調査会社のニールセンによると、全米の25年12月の全テレビ視聴時間のシェアは次の通りである。
そのうち、YouTubeが約12.9%
Netflixが約8.3%
Disney+が約4.7%
Prime Videoが約3.8%
(地上波の合計) 約20%と推定されており、各三大ネットがYouTubeとNetflixを下回っていると考えられる。
(ケーブル局合計) 約25%と推定されており、この視聴時間もまたストリーミングを下回っている。
ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)をめぐって、Netflixとパラマウントが激しい買収合戦を繰り広げたのは、WBD傘下のCNNの行方も重要ではあったが、その中核には、プラットホームを通じて配信するコンテンツの制作と配信にあった。
パラマウントが買収価格を引き上げたために、Netflixは断念して軍配はパラマウントにあがった。しかし、買収の失敗によってNetflixの株価が上昇したことは注目に値する。ハリウッドのスタジオに依存しないコンテンツを中心としてきた、ビジネスモデルつまり制作費や配信に資本を投下したほうが良いという判断がある。
特に、スポーツ分野の独占配信に注力する方針を出している。野球の国際大会・ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の放映権を獲得し、会員しか視聴できなかった出来事は記憶に新しい。
Netflixは現在、ハリウッドにもスタジオを建設する計画を進めているが、日本などでも同様の戦略を進めようとしている。米国やアジアなどで、優れた監督や俳優、脚本家らを発掘して作品づくりを進めているのである。
