2026年4月6日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月6日

 ワシントン・ポスト紙は、「米国がロシアや中国という現状変更勢力に対抗せず、イランとの戦争にかまかけているのはリソースの無駄であり、米国は核心的な国益の問題を追及するべきである」とする、同氏コラムニストのザカリアによる論説を3月13日付で掲載している。要旨は次の通り。

(Artindo/gettyimages・AP/アフロ)

 米国の歴代大統領は、米国が中東に過度に関与していると考え、国内産業の再建や中国の台頭の問題を優先すべきだと感じていた。しかし、現実には、米国は中東の秩序再編を目指す戦争に再び踏み込んでおり、その結末は、イラク、アフガニスタン、リビアと同様、期待通りにはならない可能性が高い。

 なぜ米国が同じ過ちを繰り返すのかを理解するために過去の覇権国である大英帝国の歴史が参考になる。19世紀末から20世紀初頭にかけて、英国は世界国内総生産(GDP)の約4分の1を占め、国際秩序の中心的存在であった。大英帝国はアジアやアフリカ各地の不安定や権力空白に対応するため、スーダン、ソマリア、イラク、ヨルダンなどに軍を派遣し、局地的な紛争に継続的に関与した。

 これらの介入は当時合理的に見えたが、結果として膨大な人的・財政的負担を伴い、大英帝国は際限の無い辺境の紛争にかまけ、より本質的な経済・技術面での競争への対応を怠った。米国はこの間に高度な工業経済を築き、第一次世界大戦後のドイツも再工業化と軍備強化を進めた。英国は周縁地域の混乱に気を取られる中で、国家の中核的競争力を相対的に低下させ、最終的に覇権を失った。

 現在の米国も同様の「帝国主義的誘惑」に直面しているのではないか。中東の危機に対応するためには政治的、軍事的、道義的な道理が必要だが、これは究極的には有限な資源の配分の問題である。

 米国は無限の政治力、度量、軍事力、経済力を有してはおらず、トランプ政権は、テヘランへの空爆やペルシャ湾岸でのドローンの迎撃、イランの後継者問題についての議論にエネルギーを費やしているが、その結果、21世紀に米国が対応するべき根本的問題から逸れてしまっている。

 本来、米国の最重要課題は、中国やロシアといった現状変更勢力に対抗し、国際秩序を維持することである。中国は中東の泥沼に関与せず、AIや量子技術、再生可能エネルギーなど将来の覇権を左右する分野に集中的に投資している。ロシアもまた、欧州の安全保障を揺るがし、西側民主主義を弱体化させようとハイブリッド戦を展開している。

 ロシアと中国が米国主導の世界秩序に挑戦しているのにも関わらず、米国は性懲りも無く中東に人的・財政的資源を投入し、特定国の政治体制に関与しようとしている。


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