トランプ政権は長期的な米国の利益を考えれば、ロシアと中国の脅威に対応するべきだという上記のザカリアの指摘は正しい。特にアジア・太平洋地域では、中国は米国とその同盟国に対する顕在的な脅威になりつつある。
また、北朝鮮の核とミサイルの問題も放置できない問題だ。トランプ大統領は、イランを攻撃した理由の一つとしてイランが核弾頭を装備した弾道ミサイルで米国を攻撃しようとしているので先制的自衛権を行使したと述べたが、大統領の発言を裏付ける情報は皆無に等しい。
他方、北朝鮮は、まさにその能力を持っている可能性が高い。しかし、トランプ大統領は、イランとの戦争のために北朝鮮の潜在的脅威に対抗して韓国に配備していた対弾道弾迎撃ミサイル・システムのTHAADを中東に配置転換し、さらに、沖縄から海兵隊を中東に派遣した。米国の東アジアにおける抑止力は明らかに低下している。
大英帝国の歴史の別の側面
他方、ザカリアの主張にもいささか誇張があるように思われる。まず、ザカリアは「英国は周縁地域の混乱に気を取られる中」と書いているが、当時の大英帝国では「王冠の宝石」と呼ばれた英領インド帝国の保持は帝国の繁栄のために絶対死守されなければならないと考えられていた。その見地からスーダンのマフディーの叛乱は、英国とインドを結ぶスエズ運河の終点であるエジプトの安全を脅かし、かつ紅海の安全航行の障害となる可能性があったので対応せざるを得なかったものと考えられる。
そして、ソマリアもインド洋に繋がる紅海の入り口を扼するので、やはり混乱を看過出来なかったであろう。イラクの叛乱だが、この出来事はイラクにおける原油利権の問題が大きく絡んでいる。海運に依存する大英帝国にとり船舶燃料となる原油の確保は死活的問題であった。
また、ヨルダンとは恐らくパレスチナにおけるパレスチナ人とユダヤ人の衝突を指すものと思われるが、これは第1次世界大戦中の英国の3枚舌外交のツケという自業自得ではあるが、やはり、中東地域の安定を考えれば放置は出来なかったであろう。
