歴史的に、大国は「小さな戦争」に引き込まれやすい。それは短期的な勝利や道義的正当性を得られるという幻想を伴うためである。しかし、そのような戦術的成功は戦略的成果に結びつかないことが多く、むしろ長期的な消耗の入り口となる。
仮にイランへの介入が成功したとしても、米国はイランの将来に深く関与せざるを得なくなる。それが今後10年間の米国のリソースの投入先として最適か疑問だ。
大英帝国の歴史が示す教訓は明確である。大国は外敵に征服されて滅びるのではなく、核心的問題をおろそかにして枝葉末節な問題への過剰関与によって衰退するのである。
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アジア・太平洋地域の顕在的な脅威
イラン戦争が始まって1カ月以上が過ぎたが、この戦争が終わる兆しは見えないばかりか、レバノンやイラクへと徐々に拡大している。
軍事衝突で米国とイスラエルに敵し得ないイランは石油カードを切り、ホルムズ海峡の航行を阻害することで石油の値段を高騰させ、ひいては米国内のガソリン価格を引き上げて中間選挙を控えるトランプ大統領に圧力を掛けている。米国のガソリン価格は開戦後30%上昇した。
その結果、トランプ大統領は衝突の早期解決を図ろうとしているが、最高指導者殺害により面子が潰れたイランは、徹底抗戦の構えを崩さず衝突は長期化し、消耗戦の様相を呈している。最終的にはどちらかの弾薬備蓄の枯渇が停戦のきっかけとなると思われる。
ホルムズ海峡については、トランプ大統領が同盟国に共同の船団警護を求めたり、イラン側が限定的な船舶の通航を許可するようなそぶりを見せたりしているが、同海峡からの石油の輸出を制約することはイランの石油戦略の要なので、当面、同海峡の自由な船舶の航行は望めないと思われる。その間も米国・イスラエルの攻撃に対する報復という形でイランのアラブ産油国の石油・ガス施設への攻撃が続き、ホルムズ海峡の封鎖が解かれてもただちに石油・ガスの輸出が回復する事が困難な情勢になりつつある。
他方、米軍は、2個海兵遠征部隊を随伴する強襲揚陸艦とともに中東地域に展開しようとしていて米軍がイランの石油積み出し基地のカーグ島を占領して一気に片をつけようとしているのではないかという観測がなされている。
