韓国軍戦争犯罪とライダイハン(韓国混血児)に対する
一般のベトナム人の反応
11月25日。奇岩と水郷の景勝地タムコックのホステルの40代の女性マネージャーにベトナム戦争やライダイハンについて聞いたが、「生まれる前のことなので分からない」とあまり関心がない様子。些か執拗に質問したところ「ライダイハン(韓国人の混血児)というベトナム語の言葉そのものを知らない」と不機嫌そうに答えた。
数時間後にホステルのラウンジでお茶をしていたら女性マネージャーが来てネットでライダイハンについて調べたと、紙のメモを筆者に手渡した。拙い英文で書かれたメモには「米国が韓国軍にお金を払って韓国軍は、北ベトナム政府と戦った。韓国軍はとても残虐でありベトナムで多数の女性、子ども、赤ん坊を殺害した。そして韓国軍は彼らの赤ん坊を置き去りにした……」とあった。
どうもネットでかなり時間をかけて検索しないと、韓国軍の戦争犯罪に関する情報は出てこないらしい。いずれにせよ、少なくともライダイハンに関して何らかの情報がインターネットでは閲覧できるようだ。
ちなみに、ホーチミン市のホステルで住み込みの管理人をしている南部デルタ地帯出身のカップルによると、ベトナムでも中国同様に政府当局によるインターネットへの検閲が年々厳しくなっており、反政府的書き込みや当局にとり、不都合な情報は削除されるという。また投稿者を特定して警告したり、拘束したりすることもあるという。現に男性管理人の父親は退職後の処遇への不満をSNSに投稿したら、すぐさま地区の当局に呼び出され警告されたという。
11月27日。ニンビン市の観光名所である古城(オールドタウン)の土産物屋で、25歳の女性店長にライダイハンについて尋ねたが、「初耳である。そもそも学校で韓国軍の戦争犯罪については習っていない」との回答。
彼女によると、ベトナムの中学・高校ではフランス植民地支配、第一次&第二次世界大戦、対仏独立戦争、ベトナム戦争、中越戦争については詳細に教えている。彼女は米軍の戦争犯罪については、高校の授業で習ったというソンミ村虐殺事件の被害者の証言まで克明に覚えていた。
しかし、韓国軍についてはオーストラリアやタイなどと共にベトナム戦争に参加したとだけしか記憶していないという。さらに、ライダイハンの被害者が韓国政府を訴えて裁判になっていることも、全く報道されていないので知らないという。つまりベトナムでは韓国軍の蛮行については学校でも教えないし報道もされていないようだ。
12月3日。ダナンのホステルの受付嬢は地元出身の働き者だ。彼女もやはり、ライダイハンという言葉自体を聞いたことがないと、興味なさそうに答えた。そしてダナンに米軍基地があったことすら知らなかった。
ダナンは旧南ベトナムにあり、米軍最大の基地が置かれてベトナム戦争の激戦地であった。しかし、現在では米軍基地跡は国際空港となり、ダナン郊外には広大な工業団地が広がり、海辺は人気ビーチリゾートとなり、急速に近代都市に変貌している。二十歳過ぎの受付嬢にはベトナム戦争は半世紀前の歴史上の出来事なのだろうか。
韓国政府とベトナム政府の両方が黙殺して放置するライダイハン問題
本稿(上)で述べたように、韓国政府は軍部や強硬保守派の意向を踏まえて、ベトナム人被害者女性が勝訴したソウル地裁の判決を無効とするべく上訴した。韓国軍の名誉を守らんとする韓国政府の意図は、それなりに理解できるが、他方でベトナム政府が長年ライダイハン問題を放置しているのはなぜだろうか。
共産党政権が旧南ベトナム出身者に対して差別と苛烈な統治を断行したことは本編第2回(2026年2月15日掲載)に述べた。
韓国のニュース専門チャネルYTNが10年近く前に放映したドキュメンタリー番組で、48歳になるライダイハンの男性による母親の体験談を伝えている。「ベトナム戦争終結後に支配者となった共産党当局により、母親は“敵方の韓国軍に通じた利敵行為”という罪名で逮捕され財産没収された。そして投獄され思想教育を強制された」と訴えている。韓国兵との混血児である男性自身は、子どもの頃から差別迫害の対象となり満足に学校にも通えなかったという。
ベトナム政府は、過去に性暴力被害者である女性を逆に“利敵行為した国賊”として処断したために、現在でもライダイハン問題を黙殺せざるを得ないのであろうか。
