ベトナム共産党員の韓国軍戦争犯罪に対する不可解な解釈
公務員の共産党員と偶然話す機会があった。党員歴30年超の幹部党員である。共産党はドイモイ政策で高度経済成長を持続しており、経済運営に自信を持っていることが話しぶりから明確であった。
ベトナム戦争における米軍の枯葉作戦は、現在でも障がい者が増え続けており、ベトナム戦争における米軍の戦争犯罪全般について詳細かつ理路整然と批判した。米国が資本主義世界のチャンピオンとなり、アメリカ帝国主義とベトナム共産党が率いるベトナム人民軍との戦いに至った。そして最終的にベトナム人民がアメリカ帝国主義に勝利したという資本論的解説であった。
ところが、韓国軍の戦争犯罪、特にライダイハン問題について見解を尋ねると、途端に話しぶりが曖昧になった。「韓国軍はアメリカ帝国主義に雇われた傭兵に過ぎない。米軍の指揮下で戦闘に従事している間に、一部の米兵同様に戦争犯罪を行った可能性はあるかもしれない」と極めて曖昧に口を濁した。
韓国兵の落し子であるライダイハンについては、韓国でも報道されていると指摘すると「米兵やオーストラリア兵士と同様に韓国兵も性犯罪をおかした可能性はあるが、いずれにせよ古今東西の戦争では兵士の婦女子への蛮行は避けられない悲劇である」と論点を一般論に逸らした。
筆者は不自然な論理展開から、幹部党員氏が意図的にライダイハン問題を避けていると推測した。共産党員は定期的に学習会に参加して、諸問題について党の方針を徹底的に学ぶことを義務付けられている。それゆえ幹部党員が共産党の方針により、ライダイハン問題を黙殺するように指示されているのだろう。
韓国はベトナムにとり最大の直接投資国であり、主要貿易相手(輸出は米・中・韓で第3位、輸入は中・韓・台で第2位)であり観光産業の最大顧客である。共産党指導部としては、ベトナムと韓国の友好善隣関係に波風を立てないために、ライダイハン問題が国内外でクローズアップされることを避けたいのであろう。
同時にベトナム国内で不満を持つ旧南ベトナム出身者が、ライダイハン問題を契機に結束して反政府的運動を起こすことを防ぎたいという意図もあるだろう。
投資・貿易・観光だけでなく軍備でも韓国製兵器が存在感
共産党幹部党員のモヤモヤする話を聞いてから、ホステルでネット検索していたら2025年8月のソウル聯合ニュースの記事が見つかった。曰くベトナム政府は韓国製K9式自走榴弾砲20門を総額約2億5000万ドル~3億ドルで購入する契約を韓国の防衛大手のハンファ・エアロスペース社と締結したと報じていた。
ベトナムは北ベトナム時代以来ソ連製兵器を導入していた。統一ベトナムとなってからも引き続きロシア製またはロシアからのライセンス生産の兵器が、ベトナム軍の主要装備であったのだ。従って重要兵器である自走榴弾砲をロシア製から韓国製に置換するというのは、ベトナム政府にとり大きな政治決断であろう。
さらに上記契約と同時期に両国の国防大臣が軍需協力を一層拡大する合意文書に調印したこと、また韓国からベトナムに3隻目の哨戒艦を移譲することも、ネットニュースで報じられている。どうも想像以上に急速に両国の防衛協力の深化は進んでいるようだ。
やはりライダイハン問題は両国政府にとり、秘匿隠蔽しておくのが好都合なのだろうか。現在50代になっている最低5000人から数万人とも推定される韓国兵混血児や老境に差し掛かっている被害者女性への政治的な名誉回復や救済賠償措置は、未来永劫に実現しないのであろうか。
旧日本軍のいわゆる“慰安婦問題”にはあれほど熱狂的に国民的反日運動を展開して、世界中の世論にまで訴えた韓国市民がライダイハン問題には“見て見ぬふり”をしていることも筆者には不可解である。
