ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)は当初、イランとの戦争は4~6週間で終わると語った。しかし、すでに100日以上が経過した。イランとの本格的な停戦交渉は、2026年4月にパキスタンの首都イスラマバードで始まったが、その後、膠着状態に陥った。
英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2026年5月29~6月1日実施)によれば、「できるだけ早くイランにおける戦争を終結させるためにディール(取引)をするべきであると思うか」という質問に対して、68%が「はい」と回答した。米・イラン戦争が今後、長期化すれば、ガソリンや食品価格の高騰に不満を持つ米国民の声は、さらに高まっていくだろう。それに対してトランプは、どのような対処法をとるのだろうか。まず、最近のトランプの言動と彼の交渉能力からみていくことにしよう。
同盟国を脅すトランプ
5月20日(日本時間)、駐日イラン大使館で、ペイマン・サアダト大使にイラン情勢に関して2時間以上にわたってヒアリング調査を行った。サアダトは冒頭、ホルムズ海峡はイランと対岸のオマーンの領海内にあると述べた。イランは米国ではなく、オマーンをパートナーとしてのホルムズ海峡の共同管理を望んでいる。
以前、ホルムズ海峡の管理に関して、トランプは米ABCニュースのジョナサン・カール記者のインタビューの中で、イランとの「合弁事業」を考えていると発言したことがある。その構想のきっかけとなったのは、利益もさることながら、米国に協力しない同盟国や友好国に対する怒りや処罰感情であった。
そのアイデアは、国際世論から国連海洋法条約に違反すると厳しい非難を浴びた。その上、イランも米国をパートナーとするのを是としなかった。
トランプは、米・イラン戦争の戦勝国として通航料を徴収し、米国に利益をもたらせば、戦争に対する米国民の不満を和らげ、しかも11月の中間選挙で戦争の成果としてアピールできると考えたのかもしれない。
対するイランは、あくまでもホルムズ海峡からの利益を求めた。通航料の名称を「サービス料」に変えて、「航行支援」「安全保障」「捜索救助」および「環境汚染浄化」などの名目で徴収し、利益を分配する仕組みをオマーンと協議していると言われている。
トランプは、オマーンに対して5月27日、ホルムズ海峡の管理でイラン側につくならば、オマーンを攻撃すると脅迫した。米国は今年建国250周年を迎えるが、そのうちの約200年もの間、友好関係を維持してきた同盟国オマーン(1970年8月9日以前はマスカット・オマーン)に対して軍事攻撃の可能性を示したのである。
トランプにとって同盟国と友好国が、金儲けと脅しの対象国であることが改めて分かる。ただし、世界最強の軍事力を背景にした脅しの交渉は、敵国イランに対しては効果性が低く、トランプの交渉能力が問われている。
ちなみに、エコノミストとユーガブの調査(同年6月5~8日実施)では、「トランプ大統領は、イランとの交渉においてどのぐらい効果的か」という質問に対して、67%(「非常に」と「いくらか」の合算)が「効果的ではない」と答え、「効果的である」の32%(同)を、35ポイントも上回った。
