「パンとサーカス」
エコノミストとユーガブの調査(同年5月29~6月1日実施)では、「イランが濃縮ウランを放棄せずに、取引をするべきか」という質問に対して、34%が「はい」、26%が「いいえ」、29%が「分からない」、11%が「今すぐ戦争を終結させるためにイランとディールをするべきではない」と回答した。34%の米国民がイランの濃縮ウラン放棄よりも、戦争の終結を優先しているのに対して、「いいえ」と「ディールをすべきではない」を合算した対イラン強硬派は37%になり、3ポイントだが上回る。
その傾向は、MAGAに限ってみると強く出ている。14%が「はい」、46%が「いいえ」、16%が「分からない」、24%が「今すぐ戦争を終結させるためにディールをするべきではない」と答えた。MAGAでは対イラン強硬派が70%に達した。
トランプは、ジョー・バイデン前大統領に敗れた2020年米大統領選挙に、イランが選挙介入したとMAGAに訴えて、彼らの反イランの感情を高めた。イランとの交渉が行き詰まる中、MAGAの意見もあって、トランプは、濃縮ウランの放棄を求めないディールを安易に行うことができない状況に、自分を追い込んでしまったのだ。
このような状況に置かれたトランプは、次の1カ月間は米国民の米・イラン戦争に対する不満や、MAGAのイランの濃縮ウラン放棄に対する関心をそらすために、ホワイトハウスでの総合格闘技団体「UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)」の大会、米国、カナダおよびメキシコによる共同開催のFIFAワールドカップ並びに7月4日の建国250周年のイベントを最大限に活用するだろう。
それは、古代ローマの権力者が用いた手法である。彼らは無償の食糧(パン)と娯楽(サーカス)を民衆に与えて、政治への不満を押さえ、彼らの関心を政治や社会的な不満から奪ったように、トランプは「娯楽」で、白人労働者を含めた支持基盤を固めるとともに、米・イラン戦争に反対する米国民の不満や関心をそらすと考えられる。
ただ、すでにアーティストたちが建国250周年を記念するコンサートの出演を相次いで辞退している。そこで、トランプは彼らに代わって自身で演説を行うと言う。これでは、MAGAのための建国250周年を祝うイベントになりかねない。一層分断を深めることになると懸念される。
結局、トランプが提供できるのは、娯楽のみである。食糧(パン)はどうなるのだろうか。
