2026年6月10日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月10日

 Economist誌5月16日号は、「インドネシアは危険な道を辿っている」との社説を掲載し、プラボウォ大統領がイエスマンに囲まれ間違った経済政策を進めインドネシアを危険に晒している、と主張している。要旨は以下の通り。

(AP/アフロ )

 プラボウォ大統領は、1998年のアジア金融危機の際に、経済崩壊を受けた大規模デモで、義父のスハルト大統領政権崩壊を目撃した。後継者を目指していたプラボウォは政治的混乱に陥り、四半世紀後の2024年に漸く大統領になった。

 一方、彼は再度経済危機を経験したいとは考えないだろうと見るのは間違いだ。彼は権力を集中させ、ゴマ擦りを周りに配し、尊敬されていた財務大臣を解雇し、国際通貨基金(IMF)をバカ呼ばわりし4月に世界経済の心配は不要と発言したサデワに代えた。

 ビジネス関係者は沈黙しているが、それは、大統領が人権問題で評判の悪い短気な元将軍だからか、彼が最近ビジネスを虐めているからだろう。大統領は現実を見ず、経済と民主主義に危機を齎している。助言は聞かないだろうが、以下が現実だ。

 彼の旗艦政策は財政的に実現不可能だ。予算の10%を2つの旗艦政策、無料給食と8万の村落協同組合設立に支出するのは浪費だ。エネルギー危機下では間違う余裕はなく、政策を変更しなければ危機に瀕する。

 彼には、対旗艦政策支出削減か、対化石燃料補助金減額か、さもなくば、予算の赤字上限を国内総生産(GDP)3%に規制する法律を破るかの選択しかない。どの選択にもリスクがある。旗艦政策の浪費を止めれば、「弱く」見られ、エネルギー価格上昇は暴動をもたらすので、予算赤字の法定上限越え容認との第三の道を取る可能性がある。

 それは間違いだ。3%上限はマーストリヒト条約の引き写しだが、98年の通貨危機以来、インドネシアの財政規律への真摯な姿勢の象徴だった。現在、投資家は懸念し、格付け会社は格下げを視野に入れている。

 プラボウォ政権下で60億ドルの外国資本が国外退避し、ルビアは11%下落し史上最低レベルだ。予算赤字上限撤廃は、借入コストを上げる。

 プラボウォは経済だけでなく、民主主義も後退させている。議会の野党は中立化。州知事の直接選挙廃止提案は良い兆しではない。市民社会は脅され、反対派の生存空間も、政策に関する建設的議論も限定的だ。十分な助言を得ていない一人の元軍人の直感に過度に依存している。


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